椀に広がる楽しみ 懐中汁粉の魅力 植原綾香 近代食文化研究家
湯を注いでお手軽おいしいといえばカップラーメンが思い浮かぶが、湯を注いで食べる楽しみには意外と歴史があり、戦前に楽しまれたものの一つに懐中汁粉がある。 今でもスーパーや和菓子店で購入できるが、もなかの中に乾燥させたさらしあんが入っており、熱水で即席汁粉が完成する。 正確な起源は不明だが、1888(...
身の締まった真サバが魅力 長崎・福江島の鬼鯖鮨 小島愛之助 日本離島センター...
今回の舞台は長崎県五島市の主島・福江島、人口は3万4419人で全国の離島で5番目に多く、面積は326.31平方㌔で6番目に大きい外海離島である。 南西部の玉之浦や東部の岐宿、福江はリアス式海岸で複雑な海岸線を持っている。一方、西側の東シナ海に面した地域では海食崖が発達している。 島の南東部には福江...
土佐の洗礼 「どろめ」「のれそれ」とは 眉村孝 作家
「お姉さん、どろめに、のれそれをお願い」 今から20年ほど前の春、東京から高知市へ赴任したばかりのころだ。高知市のお隣、南国市で病院を経営するおんちゃん(土佐弁で「おじさん」の意味)とふとしたきっかけで知り合いになり、早速飲むことになった。 おんちゃんが指定した、高知市中心部にある「タマテ」という...
中華麺をカツオだしで 沖縄そばのルーツと魅力 小川祥平 西日本新聞社出版グル...
明治の中期以降、東京や横浜の中華街で「ラーメン」が食べられるようになった。同時期、九州・長崎では華僑が中華麺を使った「ちゃんぽん」を生みだし、豚骨ラーメンへとつながっていく。さらに大陸に近い沖縄では独自の麺文化が根付いた。「沖縄そば」である。 ルーツは琉球王国時代の宮廷料理との説もあるが、詳しいこ...
地域現れる雑煮 材料に歴史あり 木下祐輔 アジア太平洋研究所調査役
そうか、こちらでは丸餅に白みそなのか。正月三が日、妻が作ってくれたお雑煮を見てふと考えた。 雑煮は1年の無事を祈り、正月に食べる伝統的な日本料理だ。沖縄など一部形が異なる地域もあるが、正月の風物詩として日本各地で親しまれている。そのため、餅の形やだし、具に至るまで多種多様な雑煮が存在する。(写真は...
低カロリーで健康効果も 植物性原料のミルク 畑中三応子 食文化研究家
年末年始に懸念された生乳の大量廃棄問題で、牛乳をそのままコップに注いでゴクゴク飲む習慣が復活し、「やっぱりおいしい」としみじみ感じている。 戦後、パン食の普及とともに牛乳の消費は右肩上がりで増えた。「新しい国民食糧」「完全栄養食品」と呼ばれ、池田内閣が所得倍増計画を打ち出したとき、社会党は「全国民...
たった一つの種芋 ミネラル豊富な種子島の味覚 小島愛之助 日本離島センター専...
鹿児島県の種子島は大隅諸島を構成する島の一つであり、県内の有人離島の中で最も東に位置している。人口は2万9847人で全国の離島で7番目に多く、面積は444.3平方㌔で5番目に大きい離島である。最高地点の標高は回峯(まわりのみね)の282.4㍍で、宮之浦岳の1936㍍を最高峰とする隣の屋久島と比べる...
「わが家の雑煮」を語ろう 県民性では決まらない? 眉村孝 作家
仕事の関係で、いくつかの地方に数年ずつ住んできた。北関東、四国、九州。どの地域にも、生まれ育った埼玉や東京とは異なる食文化があるため、地域の食材や料理をできる限り味わってきた。だがほとんど口にできなかった料理もある。雑煮だ。 角餅か丸餅か、餅を焼くか否か、すまし仕立てか味噌仕立てかー。雑煮は地域に...
魅力増すジビエ料理 コンテスト応募レシピが200超 畑中三応子 食文化研究家
「第6回ジビエ料理コンテスト」の2次審査が2021年12月に行われ、各賞が決まった。害獣として駆除されるシカ、イノシシの食肉利用拡大をめざし、農林水産省が鳥獣利活用推進支援事業の一環で実施するイベントだ。 テーマは「国産のシカ・イノシシを使い、多くの人に安全でおいしく提供できる料理」。和洋中のジャ...