市場めしより「てっぺん」 眉村孝 作家 連載「口福の源」
6月初め、急な仕事で札幌へ出張した。宿を探していて見つけたのが、市民の台所「二条市場」に近いホテルだ。市場の場所は、札幌市中央区の大通公園の南東側。明治初期、石狩浜の漁師が川を上って札幌へ入り、鮮魚などを販売したことが始まりだという。 私には「市場での食事=市場めし」に惹(ひ)かれる傾向がある。初...
3年トラフグ、沼島でも 小島愛之助 日本離島センター専務理事 連載「口福の源...
沼島は、淡路島の南4.6キロの紀伊水道北西部に浮かぶ離島であり、兵庫県南あわじ市に属している。面積2.71平方キロ、周囲9.53キロに、202世帯、392人(2022年12月末現在)が暮らしている。公共交通機関によるアクセスは、神戸三宮から高速バス(1時間30分)とコミュニティーバス(1時間)を乗...
名物キビナゴを食す 小島愛之助 日本離島センター専務理事 連載「口福の源」
甑島(こしきしま)は鹿児島県薩摩川内市の川内川河口から西約26㌔の東シナ海上に位置し、上甑島、中甑島、下甑島の三つの有人離島が、北東から南西に35㌔にわたって連なっている。 変化に富んだリアス式海岸や8000万年前(白亜紀)の地形がむき出しになった断崖など、圧倒的な自然の景観美と太古のロマンにあふ...
越前はセイコ、ガサエビ 眉村孝 作家 連載「口福の源」
「福井県といえば越前ガニ(オスのズワイガニ)」。若いころ、私はそんなイメージを抱いていた。埼玉生まれの私は長く福井を訪れたことがなかった。ただ関西在住の友人からは「冬には福井に越前ガニを食べに行く」という話をよく聞いたので、そんな印象を抱いたのだろう。 初めて「福井で越前ガニ」の機会が訪れたのは8...
クエ入りの海鮮丼再び 「神守る島」宗像大島での出会い 眉村孝 作家
4年前の2月。福岡県で一番大きな島である宗像大島(福岡県宗像市)を訪れた私は、港で宗像市本土の神湊港へ帰る16時20分発のフェリーに乗るかどうか迷っていた。朝早くに大島へ渡った私は宗像大社中津宮など島の名所を歩き続け、お腹はペコペコだった。 この便を見送れば次は18時発。島で食事をする時間はできる...
身が引き締まり肉厚 対馬と言えば穴子 小島愛之助 日本離島センター専務理事
昨年12月に長崎県の対馬島を久方ぶりに訪問した。 釜山から約50㌔の距離にあるという韓国に近い島であるが故に、近年韓国からの観光客でにぎわい、2018年のピーク時には年間約41万人の韓国人観光客が訪れたという。 その後、日韓関係悪化の影響で韓国からの人流に陰りが見られ、加えて新型コロナウイルス感染...
繊維業とともに広がる? 奥が深いソースカツ丼 眉村孝 作家
昨年11月末。約11年ぶりに復旧したJR只見線に全線搭乗したあと、福島県の会津若松駅で列車を降り、とんかつ屋「かつ一」に向かった。目的はソースカツ丼。福岡や東京ではあまりお目にかからない。「ソースカツ丼はソウルフード」の声もある会津若松市へ着き、久しぶりに食べたくなったのだ。 待つこと十数分。出て...
豚骨は久留米から日田へ 来々軒の歴史 小川祥平 登山専門誌「のぼろ」編集長
「ここの屋台は解散。今からはラーメンを広めていこう」 白濁豚骨ラーメンを生みだした屋台「三九」(福岡県久留米市)創業者の杉野勝見さんはそう宣言した。この言葉がなければ、豚骨ラーメンが九州各地に広がることはなかったかもしれない。 宣言した相手は屋台で一緒に働いていた叔父、田中始さん。杉野さんは言葉通...
脂たっぷり肉厚の「黄金アジ」 巡り合った千葉・金谷産 眉村孝 作家
「ごめんね。今、終わっちゃったのよ」。11月半ばの平日の午後1時前。東京・八丁堀の路地にあるランチが評判の居酒屋を初めて訪れると、洗い物をしていた女性からこう告げられた。 人気の店だから仕方あるまい。踵を返し、近くでランチの店を探す。すると、同じ路地の奥にある「黄金アジフライ&ヒレカツ ¥950」...