身の締まった真サバが魅力 長崎・福江島の鬼鯖鮨 小島愛之助 日本離島センター専務理事
2022.03.14
今回の舞台は長崎県五島市の主島・福江島、人口は3万4419人で全国の離島で5番目に多く、面積は326.31平方㌔で6番目に大きい外海離島である。
南西部の玉之浦や東部の岐宿、福江はリアス式海岸で複雑な海岸線を持っている。一方、西側の東シナ海に面した地域では海食崖が発達している。
島の南東部には福江港があり、長崎市や五島列島の各島をつなぐ海上交通の要衝となっている。長崎港からはジェットフォイルで約1時間25分、フェリーで約3時間10分の船旅である。
博多港を午後11時45分に出航し各島を経由するフェリーもある(約8時間30分)。福江港の南西には五島つばき空港が位置し、長崎空港(30分)、福岡空港(40分)から空路を利用することもできる。
観光資源については枚挙にいとまがないので、個人的な好みでご紹介するにとどめたい。
福江島は遣唐使が派遣されていた時代に中国大陸を目指す直前の最終寄港地だったので、三井楽に遣唐使ふるさと館があり、近くには天然の海水浴場としては、日本一美しいといわれている高浜海水浴場がある。
高浜海水浴場から西海岸を南下すると、白亜の大瀬崎灯台が立ち、西海国立公園の特別地域に指定されている大瀬崎断崖に行き着く。展望台から望む白亜の灯台と東シナ海に沈む夕陽とのコントラストは言葉に言い尽くせない美しさがあるといわれている。
福江から岐宿、三井楽を経て、玉之浦に至る行程には、いくつかの教会が存在し、福江島の祈りの拠点をめぐることもできる。
今一つ、港と空港の真ん中ほどにある明星院は、五島家代々の祈願所であり、五島で最古の木造建築物である。
806年に空海が唐から帰朝する途中で、この寺にこもり、安置されていた虚空蔵菩薩に100万回祈り続けたところ、東の空に輝く明けの明星が現れたことから明星庵と名付けたと伝えられている。この寺の本堂の天井には、狩野派の画家の筆によって、121枚の花鳥画が描かれているので、ぜひご覧いただきたい。
福江島の味であるが、これも一つに絞るのが難しい。各方面からのご批判を覚悟の上で、今回は「鬼鯖鮨」(写真)をご紹介することをお許しいただきたい。
五島列島の西側の海域は流れが速いので、適度な脂肪が付き身の締まった真サバが取れる。水揚げされたサバを傷がつかないように木のトロ箱から発泡スチロールに入れ替えて、氷水を入れ新鮮な状態で運んでくるという。
ちなみに「鬼鯖」のブランド名は、福江島のシンボルともいわれる鬼岳(標高315㍍)にちなんで名付けられた。この新鮮な真サバを独自の旨酢で浅く締め、サバ本来の生に近いうま味を引き出した上で、岐宿の山内盆地で育てられたコメと合わせたのが「鬼鯖鮨」だ。
普通の「鬼鯖鮨」と「あぶり鬼鯖鮨」があり、三井楽水産が港や空港などで販売しているので、見かけられたらぜひお試しいただきたい逸品である。
(Kyodo Weekly・政経週報 2022年3月7日号掲載)
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