自家製凍り豆腐のセリ鍋 藤野嘉子 料理研究家 連載「口福の源」
立春を過ぎたころは、暦では「春」ですが、まだまだ寒い。日の出は早くなりましたが、体は冬から目覚めていないのが現実ですね。この頃は、苦みのあるセリやフキノトウなど、体を呼び起こしてくれる食材が店先に並びます。自然とはありがたいものだと感じずにはいられません。 セリは、薬味のようですが栄養価の優等生で...
おせち料理 藤野嘉子 料理研究家 連載「口福の源」
忙しい毎日を送っている私たちですが、お正月は、やはり特別ではないでしょうか。 おせち料理とは、年神様へ餅や野菜をお供えして元日の朝に汲(く)んだ「若水」と、窯に初火をともして作る料理です。五穀豊穣、子孫繁栄などの意味が込められます。神聖な気持ちになります。冷凍のお重が元旦に届くことも、珍しくありま...
芋、栗、南京、焼き芋サラダ 藤野嘉子 料理研究家 連載「口福の源」
「石焼き〜芋」と路地から聞こえる威勢のいい声に、子ども心が躍った。そんな時代に育った私ですが、最近はめっきりとみられなくなりました。懐かしい思い出です。 今では、スーパーの店先でいつでも買える焼き芋ですが、専門店もあり、芋の種類も豊富。焼き芋を使ったデザートまで、いろいろ楽しめる時代になりました。...
シン・異国料理 藤野嘉子 料理研究家 連載「口福の源」
9月に入りました。秋ご飯が恋しいですね。サンマ(今年は良さそう)、秋サケ、キノコ、芋栗南京などなど。体と心と季節と食べ物。何だか繋(つな)がっていますね。 まだ少し蒸し暑い時期は「南蛮漬け」というお料理はいかがでしょうか。南蛮辛子(唐辛子)を入れた甘酢しょうゆのたれに魚、肉を揚げて漬け込む。マリネ...
夏のパワーフード 藤野嘉子 料理研究家 連載「口福の源」
夏のパワーフードに欠かせないのがニンニク。疲労回復、精力増強、食欲増進。イヤイヤ、もう聞いただけで元気出そうです。 アリシンという成分が、あの強烈な匂いのもと。加熱すると、遠くにいてもおなかがすくような感覚になりますね。 禅寺などでは、ニンニクやニラ、らっきょう、行者ニンニク、ネギなどの香りの強い...
キュウリが活躍する季節 藤野嘉子 料理研究家 連載「口福の源」
じめじめした蒸し暑い日が続いています。夏日はもう5月に経験済み。例年、この時期は晴れ間が時折のぞくとうれしい半面、梅雨が明ければ長い夏日と熱帯夜がいつまでも続くのだろうか、と思ってしまいます。 特に暑さに慣れていない夏の初めは疲れやすく、知らず知らずに熱中症になるケースもあります。 自然というのは...
カヌレ温故知新 畑中三応子 食文化研究家 連載「口福の源」
スイーツ界ではこの2、3年「カヌレ」人気が再燃している。 最初のブームは、1996年だった。90年代はティラミスを皮切りに、新種の菓子が現れては流行を繰り返した時代。東南アジア発祥のナタデココやタピオカも混じっていたため、〝洋菓子〟や〝ケーキ〟ではくくれなくなってしまった。そこで生まれたのが〝スイ...
甲州名物、ほうとうと富士 眉村孝 作家 連載「口福の源」
2月前半の3連休最終日の夕暮れ時。私と学生時代からの友人Tは、山梨県笛吹市の石和(いさわ)温泉街にある「甲州ほうとう小作(こさく)」ののれんをくぐった。 朝から寒風に当たりつつ、河口湖畔にある三ツ峠山(みつとうげやま)(標高1785メートル)を登ったため、体が芯から冷えている。時間が許すなら、温泉...
震災と釜石の居酒屋 眉村孝 作家 連載「口福の源」
「ごめんね。海がしけてるので、大したものがないのよ。それでもよいのなら」。JR釜石駅(岩手県釜石市)近くにある居酒屋「とんぼ」ののれんをくぐると、女将(おかみ)からカウンター越しに声をかけられた。9月8日午後8時過ぎのことだ。 その日は埼玉県内の自宅を早朝に出て、東北新幹線、JR八戸線と乗り継ぎ、...