自家製凍り豆腐のセリ鍋 藤野嘉子 料理研究家 連載「口福の源」
2025.02.24

立春を過ぎたころは、暦では「春」ですが、まだまだ寒い。日の出は早くなりましたが、体は冬から目覚めていないのが現実ですね。この頃は、苦みのあるセリやフキノトウなど、体を呼び起こしてくれる食材が店先に並びます。自然とはありがたいものだと感じずにはいられません。
セリは、薬味のようですが栄養価の優等生で、ビタミンやミネラルが多いのです。元気のよいセリを見かけたら、まず買い求めるのがよいです。難しく考えずにざぶざぶ洗い、4センチに切り、根もきれいに洗い使います。葉先は生のままで。肉を焼いてお皿に添えます。根元の方は、さっと煮てお鍋にすると、いくらでもいただけます。野菜不足解消です。
セリ鍋のお供として、わが家では冬になると欠かせないのが、冷凍庫で作る自家製凍り(高野)豆腐です。
といっても、パックのまま凍らせるだけ。なんとも簡単ですが、凍って「す」の入った豆腐が、だしを吸い、柔らかくなって、不思議な食感です。
今回のように骨付き肉を使うとだしもよく出ておいしく作れます。骨付き肉の調理のコツは、一度下ゆでをして汚れやあくを取ることです。このひと手間で、きれいなスープを作ることができます。
体は温まり、セリの苦みで、春が待ち遠しくなる。そんな季節鍋です。
<材料>2人分
・鶏骨付き肉ぶつ切り 400g
(下味 塩小さじ1/2)
・木綿豆腐 1丁
・セリ 1束
・水 600cc
・酒 50㏄
・塩 適量
たれ
・しょうがのすりおろし 1かけ分
・万能ねぎの小口切り 適量
・ポン酢しょうゆ 適量
<作り方>
①鶏肉は熱湯につけて白くなったら取り出して霜降りにします。湯をきり、塩をふっておきます。セリは4cmの長さに切ります。根はよく洗って使います。
②豆腐は前日にパックのまま冷凍庫に入れて凍らせ、取り出して解凍し、食べやすい大きさに切ります。
③土鍋に水、酒を入れ、鶏肉を加えて火にかけます。沸いたらあくを取り、弱火で20分煮ます。豆腐を加えてさらに弱火で5分煮ます。
④塩を加え味をみて、最後にセリをのせて、ふたをして1分煮たら火を止めます。
(Kyodo Weekly・政経週報 2025年2月10日号掲載)
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