春野菜たっぷり「沢煮椀」 藤野嘉子 料理研究家 連載「口福の源」
春になると、春野菜たちがたくさん出回ります。最近、季節感を野菜で感じるのは難しいといわれますが、それでも春は新タマネギ、新キャベツ、新ゴボウ、新ニンジン、そして新タケノコ。 なんでも「新」を付けたらいい、というくらいです。 その春野菜を束ねた、おいしい「沢煮椀(さわにわん)」という汁ものがあります...
甲州名物、ほうとうと富士 眉村孝 作家 連載「口福の源」
2月前半の3連休最終日の夕暮れ時。私と学生時代からの友人Tは、山梨県笛吹市の石和(いさわ)温泉街にある「甲州ほうとう小作(こさく)」ののれんをくぐった。 朝から寒風に当たりつつ、河口湖畔にある三ツ峠山(みつとうげやま)(標高1785メートル)を登ったため、体が芯から冷えている。時間が許すなら、温泉...
草津の四川料理、再び 眉村孝 作家 連載「口福の源」
「草津温泉の四川料理のRが閉店だって」。母校の先輩であるSさんからLINEのメッセージが届いたのは2023年正月のことだ。私は「ええ! いつですか?」と反応する。Sさんからは「先月だと。草津の楽しみがなくなってしまった」と返ってきた。 8年ほど前から母校の同窓生グループで草津温泉へ旅するようになっ...
明治の若者も牛肉大好き 畑中三応子 食文化研究家 連載「口福の源」
NHKの朝ドラ「らんまん」で、主人公の槙野万太郎は、うれしいことがあると仲間と牛鍋を食べに行く。 初めて行ったのは、1回目の上京時。牛肉自体が初体験で、同行の竹雄とグツグツ煮える牛鍋を緊張の面持ちで見つめ、こわごわ口に入れるや「うまいー」「甘くてたまらん」「口んなかで溶けた」と感激し、のけぞる様子...
自作推し「カポナータ」 眉村孝 作家 連載「口福の源」
40歳を前にして初めて単身赴任が決まったとき、日々の生活についていくつか決心をした。そのうちの一つが「コンビニ弁当は食べまい」。ランニングやスポーツを続けてはいたが、記者を20年近く続けた身体は少しずつガタがきている。周りには、地方転勤で食生活を乱し、恐ろしく「成長」したり、体調を崩したりする人が...
長崎・鷹島にアジあり 小島愛之助 日本離島センター専務理事 連載「口福の源」
アジの水揚げ高日本一を誇る都市で、近年「アジフライの聖地」として売り出し中の長崎県松浦市は、伊万里湾に浮かぶ5つの有人離島(福島、鷹島、黒島、飛島、青島)を行政区域としている。今回は、このうち鷹島について紹介したい。 旧鷹島町の鷹島は2006年元日、松浦市・福島町と合併し松浦市となった。その後、0...
繊維業とともに広がる? 奥が深いソースカツ丼 眉村孝 作家
昨年11月末。約11年ぶりに復旧したJR只見線に全線搭乗したあと、福島県の会津若松駅で列車を降り、とんかつ屋「かつ一」に向かった。目的はソースカツ丼。福岡や東京ではあまりお目にかからない。「ソースカツ丼はソウルフード」の声もある会津若松市へ着き、久しぶりに食べたくなったのだ。 待つこと十数分。出て...
豚骨は久留米から日田へ 来々軒の歴史 小川祥平 登山専門誌「のぼろ」編集長
「ここの屋台は解散。今からはラーメンを広めていこう」 白濁豚骨ラーメンを生みだした屋台「三九」(福岡県久留米市)創業者の杉野勝見さんはそう宣言した。この言葉がなければ、豚骨ラーメンが九州各地に広がることはなかったかもしれない。 宣言した相手は屋台で一緒に働いていた叔父、田中始さん。杉野さんは言葉通...
脂たっぷり肉厚の「黄金アジ」 巡り合った千葉・金谷産 眉村孝 作家
「ごめんね。今、終わっちゃったのよ」。11月半ばの平日の午後1時前。東京・八丁堀の路地にあるランチが評判の居酒屋を初めて訪れると、洗い物をしていた女性からこう告げられた。 人気の店だから仕方あるまい。踵を返し、近くでランチの店を探す。すると、同じ路地の奥にある「黄金アジフライ&ヒレカツ ¥950」...