食べ物語

春野菜たっぷり「沢煮椀」  藤野嘉子 料理研究家  連載「口福の源」

2024.04.29

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春野菜たっぷり「沢煮椀」  藤野嘉子 料理研究家  連載「口福の源」の写真

 春になると、春野菜たちがたくさん出回ります。最近、季節感を野菜で感じるのは難しいといわれますが、それでも春は新タマネギ、新キャベツ、新ゴボウ、新ニンジン、そして新タケノコ。

 なんでも「新」を付けたらいい、というくらいです。

 その春野菜を束ねた、おいしい「沢煮椀(さわにわん)」という汁ものがあります。

 沢煮とは「たくさんの」「たっぷり」という意味があり、由来は猟師さんたちが豚や鶏肉などを持って山に入り、山菜や野菜で具たくさんの汁ものを作ったからといわれています。乾いた干し肉に、沢の水と野菜を加えて煮る。味付けは塩のみ。想像しただけでもワイルドで「絶対においしそう」と、うなずいてしまいます。

 実は私が和食を好きになったきっかけは、このお椀にあります。なんとも繊細でシンプル。そして、うまさがド直球。野菜が主役のお椀に憧れたのでした。

 さて、作り方をご紹介しましょう。

 コツは、うま味の背脂(バラ肉)を茹(ゆ)でこぼすことで、余分な脂がなくなり、あっさりと仕上がります。また、野菜は柔らかく煮過ぎないように。歯ざわりが残るくらいに仕上げます。もちろん黒粒胡椒(こしょう)は必須です。

 繊細でバランスのよい、具たくさん汁を楽しんでください。

<材料>2人分
・猟師さんの干し肉の代わりに、豚背脂。なければ豚バラ肉100グラム
・ゴボウ、ニンジン、ウド、シイタケ、あればセリなど合わせて200グラム
・昆布10センチ1枚
・塩小さじ1/3、酒大さじ1、しょうゆ小さじ1、黒粒胡椒

<作り方>
①背脂肉(豚バラ肉)は細切りにします。塩小さじ1をまぶし、よくもみこみます。熱湯に入れて、沸いたらざるに取り出して、水洗いします。
②野菜はどれも4センチの長さに切り、繊維に沿って千切り。今回は太さ細さは問いませんが、同じ太さにそろえることが重要です。ゴボウとウドは水に3分ほど浸けてあく抜きしてください。
③600ミリリットルの水と昆布を入れて15分ほど置いてから火にかけます。沸いたら昆布を取り出して、豚の背脂(バラ肉)を入れて沸いたら、野菜を加えます。
④さっと3~4分ほど煮て、野菜がしんなりしたら、塩、酒、しょうゆで味をつけます。
⑤お椀に野菜をたっぷりと盛り付け、汁をはり、吸い口に黒粒胡椒をゴリゴリと振ってください。

(Kyodo Weekly・政経週報 2024年4月15日号掲載)

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