鼻呼吸でおいしく食べる 安武郁子 食育実践ジャーナリスト 連載「口福の源」
2024.06.03
5月に入り、花粉症に悩まされていた方も症状が治まってきた頃でしょうか。
花粉症やアレルギーでもなく、風邪でもないのに、片方の鼻が詰まっていることはありませんか?
どちらの鼻が詰まるかは自律神経がコントロールしていて、通常2~3時間おきに詰まる側と通る側が入れ替わるようです。このような状態を「ネーザルサイクル」といい、片鼻呼吸のために横向きでないと寝れない人が少なくありません。おおかた口呼吸となっています。
「スマホ首」ともいわれるストレートネックになると必然的に口呼吸になります。この影響で姿勢や睡眠の質が低下し、健康を損なう要因となり得ます。
口呼吸かどうかは、顔の形や見た目からも、うかがいしれます。
図の二重顎(右側)のように、顎がなくなった状態はほぼ口呼吸です。これは舌根の沈下を意味します。そして、お腹ポッコリの姿勢です。
二重顎は睡眠時無呼吸の恐れもあります。通常、起きている時は筋肉によって支えられているため、空気を肺に取り込む通路である気道を閉塞(へいそく)することなくスムーズな呼吸ができます。しかし、睡眠中は全身の筋肉が緩んで脱力するため、舌や喉の周りの筋肉が喉の奥に落ち込み、気道が狭くなります。これにより、呼吸のたびに狭くなった気道の粘膜が振動して大きないびきをかき、時には呼吸が止まることがあるわけです。いびきも要注意です。
口呼吸を改善するためにも、日頃の食事の時には良食を意識し、習慣化する必要があります。食事中は正しい姿勢を保ち、口を閉じて咀嚼(そしゃく)することで唾液の分泌を促し、消化を助けます。そして、よく咀嚼をすることは舌の運動にもなります。舌という筋肉の塊を鍛えることが大切です。
このように食事中も姿勢や呼吸を整えることで、自律神経のバランスを整え、睡眠の質を向上させることができます。さらに、鼻呼吸を意識して食べると、食べ物の香りが鼻から味わえ、おいしさを引き立たせます。
古代人の呼吸といわれる両鼻呼吸を意識して取り戻したいものです。両鼻から息を吸い、お腹を膨らませ、吸いきったら両鼻から一気に強く息を吐き、お腹をへこませる。このような呼吸法は血行を促進し、気分をリフレッシュさせるだけでなく、内臓の活性化にも効果があるそうです。おいしく食べるためにも鼻呼吸を習慣にしましょう。
(Kyodo Weekly・政経週報 2024年5月20日号掲載)
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