中山間地域、不利な条件を強みに変える 青山浩子 新潟食料農業大学准教授 連載「グリーン&ブルー」
2024.04.15
担い手不足、耕作放棄地といった農業の問題は、とりわけ田畑が山の斜面に沿って広がる中山間地域で深刻だ。日本の全耕地面積の約4割が中山間地域にある。こうした不利な条件を強みに変え、挑戦を続ける地域がある。新潟県上越市にある清里地区だ。(写真はイメージ)
人口は約2500人。農地の約3割が山間地にある。訪れた2月、平野部は雪がほぼ消えていたが、標高450メートルまで上がると、田畑は深い雪で完全に覆われるほど気候条件が異なる。
清里地区が目指すのは「清里ー農場化計画」。地区内には面積が異なる農家が存在しているが、相互協力により一つの農場のようにまとめようという計画で、既に動き出している。
地区内で最大の経営規模を持つ有限会社のグリーンファーム清里(GF清里)が核となり、周辺に位置する法人や個人農家からの要望によって、農業機械や従業員を貸し出している。
また、農地利用の調整も行っている。例えば、ある集落で離農者が出ると、通常近くの担い手が農地を預かる。だが中山間地の水田ばかりを引き受ける担い手は、作業効率や収益性が劣る。そのためGF清里が調整役となって、山間地の水田を引き受けた担い手に対し、次は条件のよい平場の農地を引き受けられるようにしている。こうすることで、どの担い手も平場と中山間地という条件の違う農地を持つようになる。条件が違えば、農作業の時期もずれるため、一時に集中しやすい労働力を平準化できる。中山間地と平場の農業をセットにすることで、農業経営は安定しやすくなり、険しい条件の中山間地の農地も保全できるというわけだ。
農業だけでなく、生活面でも奮闘している。清里地区には「櫛池農業振興会」という組織があって、各集落で農業を営むにあたり必要な書類作成など事務作業を請け負っている。それだけでなく、地元内外の住民同士の交流に力を入れ、地域活性化に力を注ぐ。神奈川県川崎市とは20年来の交流を続けており、同市で開催されるお祭りには清里地区から特産品を持ちこみ、毎年参加している。女性たちの手作りの漬物や山菜は飛ぶように売れる。すると今度は、川崎市の住民が同地区の稲刈りツアーに参加し、親睦を図っている。地区外の人たちの力を借りながら、ここでの暮らしを守っていこうという強い思いが感じられる。中山間地での暮らしの真の魅力や苦労は、根を下ろさなければ理解できないのかもしれない。だが、地域産品や交流を通じて人々の息づかいを感じ、応援することはできる。
(Kyodo Weekly・政経週報 2024年4月1日号掲載)
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