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世界は「エッグフレーション」  ハワイでは12個1300円も  古賀純一郎 茨城大学名誉教授

2023.05.15

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世界は「エッグフレーション」   ハワイでは12個1300円も  古賀純一郎 茨城大学名誉教授の写真

 物価の優等生と長年いわれてきた卵の値段が高止まりしたままだ。鳥インフルエンザの感染拡大による供給不足が深刻化しているためだ。それなら輸入すればよいではないかと思うのだが、鳥インフルは世界的な現象で欧米などでも同じく高値が続いており、そう簡単な話ではない。欧米のレストランをはじめとして各国の店舗が提供するメニューにも異変が起きつつあり、鎮静化にはなお時間を要するようだ。(写真はイメージ)

 生卵を食べてはいけないー。筆者が英ロンドンに住んでいた四半世紀前、現地で売っていた卵の食べ方で知り合いの日本人に注意され驚いたことがある。当時5万人程度が住む日本人社会でこうしたルールが語り継がれていた。なぜダメなのか。卵内に潜むサルモネラ菌による深刻な食中毒事件が1990年前後に発生していたからだ。

 日本食のレストランでも、すき焼きはメニューにあるが生卵は付いていなかった。筆者はもっぱら現地の牛肉を薄切りにし、しゃぶしゃぶ風に食べていた。罹患を恐れ、卵かけご飯も食べたことがなかった。唯一、日本出張組から土産にもらったときだけは至福の時間を楽しめた。

 では、猛威を振るう鳥インフルで高騰した世界の卵の値段はどうなのか。もともと日本の卵は安すぎるのだが、そうした事情も手伝って驚くほど高い。海外在住の知人やネットの情報を総合すると、観光地価格の米ハワイでは1ダース(12個)が10㌦弱。日本円に換算すれば1300円程度で日本の5倍程度だ。州によって違いがあるようでニューヨークで7~5㌦弱。自宅でニワトリを飼い始める家庭が出てきたとの話もあるようだ。

 欧州のパリでは10個で約7ユーロ(1000円程度)。レストランやカフェではオムレツをメニューから外す料理店も出てきている。ロンドンでは同3ポンド半(600円弱)から5ポンド(800円強)。ロイター電によると、欧州連合(EU)の卵の値段は、前年に比べて平均で30%以上値上がりしている。特に、厳しいのがチェコなど東欧で同80%程度の値上がり。欧米を中心とする卵の値段の急騰は世界に広がっており卵(egg)と物価急騰(inflation)を組み合わせたEggflation(エッグフレーション)という言葉が流行中とか。

 興味深いのは日本食が大ブームの香港。昨年の日本からの卵の輸出量は前年比3割増の約2万8250㌧。輸出先の9割を占める。スーパーには日本産の卵がずらりと並び、10個で40香港㌦(700円程度)とか。卵ご飯が人気をかっさらっている。

 冒頭に触れた英国の卵のサルモネラ菌感染だが、英食品基準庁は2017年に厳しい基準を設け、これを満たしたライオンマークの刻印のある卵であれば生で食べることができるようになった。邦人にとっては朗報だったことだろう。

(Kyodo Weekly・政経週報 2023年5月1日号掲載)

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