持続可能な林業に貢献 農中総研、森林クレジットでフォーラム
2023.03.09
農林中金総合研究所は9日、「森林クレジットを巡る世界の動向と日本の対応~森林・林業の新たな価値の展望と課題~」とのテーマでオンラインのフォーラムを開き、地球温暖化対策としての森林クレジットの発行は、炭素吸収にとどまらず、森林管理の高度化などを通じて持続可能な森林・林業に貢献し、自然資本の価値評価につながることを確認した。
特別講演で、日本マイクロソフトの藤井達人金融サービス事業本部業務執行役員金融イノベーション本部長(写真中央、左は皆川芳嗣同総研理事長)が、クレジットの評価で客観性・透明性が求められている国際動向や金融業界における実践事例を紹介した。
基調講演した農林中金総研の安藤範親主任研究員(右)は「購入する企業は、クレジットの背景やストーリーに興味を持っている」とクレジットの「質」が問われていると指摘した。
同研究所の多田忠義主事研究員(左)は「森林クレジットから見える日本林業の課題」と題して講演し、森林所有の明確化、林業従事者の確保、労災、データの整備などの課題に触れ「森林クレジットの創出は日本の森林経営を革新する契機になる」と述べた。
後半のパネルディスカッションでは、コンサベーション・インターナショナル・ジャパンの浦口あやテクニカルディレクター(右)が、クレジットの活用について「地元住民の権利や生物多様性などへの貢献が求められ、良かれと思った行動が批判されることがある」と指摘、「グローバルな立場での行動が必要」と強調した。
全国森林組合連合会の佐々木太郎参事(中央右)は「クレジットによって林業は異業種とつながることができ、単なる金銭のやりとりではなく、交流で生まれる相互効果を期待する」と述べた。
住友林業の西川政伸常務執行役員資源環境事業本部長(中央左)は、インドネシアなどでの生物多様性に配慮した事業活動を紹介し「伐って、使って、植える持続的な林業をしっかり回すためには、需要を創造し再造林率を向上するべきだ」と指摘した。
農林中央金庫の岩曽聡常務執行役員(左)は、森林由来のクレジットを創出から販売まで一気通貫でサポートできる体制の構築を目指す上で「同金庫がマッチング(仲介・流通)機能を果たす」と説明した。
コーディネーターの皆川理事長が「クレジットをきっかけに林業を考え、変革を促すきっかけとなるよう期待する」と総括した。
林野庁の森重樹次長は、行政の取り組み状況を説明した。
フォーラムの参加者は620人を超え、地球温暖化ガスの吸収源としての森林に対する高い期待を反映した。
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