「研究紹介」ポストコロナ時代の生協の役割を考える 生活協同組合研究1月号
2022.01.23
生協総合研究所は、2021年11月2日に「ポストコロナ時代における生協の役割を考える」というテーマで第30回全国研究集会を開催した。同研究所の月報「生活協同組合研究」の22年1月号(Vol.552)はその採録だ。
コロナ禍は、相互扶助の組織である生活協同組合にさまざまな課題を突き付けている。感染防止対策を受けて戸別配達の要望が高まり、生協への加入や注文が大幅に増えているが、手放しで喜べる状況ではない。生協の活動の中核である人と人のつながりや、地域との関わりが制約を受けており、格差、貧困、孤立の問題も深刻さを増しているからだ。
神野直彦東京大学名誉教授は講演で、人と人との触れ合いや人と自然との触れ合いの価値を強調、「人間を(労働力などの)手段とする社会ではなく、人間を(幸福の)目的とする社会を目指すべきだ」と、生協に使命感を求めた。
石田光規氏早稲田大学教授は、オンラインによるつながり方と対面(リアル)のつながり方の違いを分析し、「効率とは別の軸持つことができるのが地域だ」と指摘、地域を支える上で生協の役割に期待を示した。
2人の講演は、コロナ禍によって限界が露呈した社会・経済システムを再構築する上で、政府や民間企業だけでなく、協同組合が重要な役割を果たすと訴える点で、この時期に相次いで発刊された「協同組合と農業経済」(鈴木宣弘著/東京大学出版会)や、「農的暮らしをはじめる本」(榊田みどり著/農山漁村文化協会)と通底する内容だ。