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「研究紹介」女性活躍で「魚離れ」?  生活協同組合研究の特集「水産物と水産業について」

2022.06.21

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 生協総合研究所の月報である「生活協同組合研究」(2022年6月号)が、水産業を特集、八木信行東大教授らが認証制度、流通、協同組合、雇用など多角的に現状を分析し、課題を浮き彫りにしている。

 出色は山下東子大東文化大学教授の「魚離れのすすむ日本の消費者と展望」だ。魚介類の消費が減っている原因についてさまざまな仮説を立て、次々と否定していく。まるで犯人を追い詰めていく推理小説のように面白い。

 たどり着いた結論は、働く女性が増えて家庭で過ごす時間が短くなり、調理に手間がかかる魚が避けられるという「家庭の事情」だ。この仮説が正しいとすれば、2010年代に急上昇した女性の労働参加率は20年代に入って頭打ちになり、さらにコロナ禍をきっかけに在宅勤務が普及しつつあり、「魚離れ」が鈍化するかもしれない

 八木教授が「水産物の特性と流通消費の課題」で指摘するように、日本の水産物は品種・品質、流通が多様で、工業製品とは根本的に異なっており、漁業・水産業は短絡的な経済効率を優先するのが難しい分野だ。

 濱田武士北海学園大学教授は「漁業協同組合の存在意義と課題」で、漁協の歴史から説き起こし、「入り会い」を管理する自治組織としての性格を強調、規制緩和を柱とする「もうかる」を追求する政策を厳しく批判している。

 佐々木貴文北海道大学准教授は「働く場としての水産業の現状と課題」で、就業実態や漁賃金、外国人労働者の人権問題を取り上げている。担い手の確保は難しく、漁船漁業の求人倍率は実に4.72。外国人労働者に大きく依存する現実に深く考えさせられる。

 流通段階での環境認証制度を取り上げたのは生協らしい視点だ。佐野雅昭鹿児島大学教授の「水産認証制度の意義と現実そして課題」は、なぜ日本では第三者認証制度が普及しないのかという根本的な疑問に答えている。

 論文だけでなく、水産加工場の場長や漁協直営飲食店の店長らの座談会を採録し、水産物の流通現場をリアルに伝えている。硬派の月報だが、分かりやすく、編集者の力量を感じる。


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