「研究紹介」 森林・林業基本計画を分析 農林金融2021年11月号から
2021.12.07
林業政策は、懸案だった森林環境税の創設法が2019年3月に成立、森林組合法も20年5月に改正されて一段落した感がある。そうした中、農林中金総合研究所の多田忠主事研究員は、今年6月15日に閣議決定された「森林・林業基本計画」に注目した。
同研究所の農林金融11月号所収の「新たな森林・林業基本計画から考える 対策すべき重点課題の評価」で多田氏は、新たな森林・林業基本計画を16年決定の旧基本計画と丹念に比較し、林業政策の方向性が「成長産業化」から「グリーン成長」にシフトしていることや、山村振興を主要な領域として位置付けていることを明確にした。
テキスト・マイニングというデータ処理の手法を使って、基本計画の策定に先立って実施されたパブリック・コメントに登場する膨大な用語の関係性を分析した上で、本論文を展開している。客観性を担保しようとする試みに新鮮さを感じる。
基本計画に対する著者の評価としては、政府が経営規模の拡大路線を鮮明に打ち出しているのに対し、「中小規模の林業経営体や家族労働主体の経営を木材生産における両輪の一つに位置付けるべきと考えられる」とし、自伐型林業や自伐林家も重視すべきだという立場を示している。
また、基本計画の本文の頻出用語を抽出して旧基本計画と比較し、「再造林」が多いことに着目。切って使うだけでなく、植えることが重要と強調し、持続可能な広葉樹の利用、製材用材の増産が焦点だと指摘した。