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「研究紹介」農業は寺院と融合する?  都市型農福連携の可能性  農林水産政策研究所

2022.02.12

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 農林水産政策研究所(PRIMAF)は、東京都健康長寿医療センター研究所とともに、都市部での農業と福祉の連携を研究しており、「農林水産政策研究所レビュー」最新号(No.105=2022年1月)が掲載した「都市化、高齢化、個人化が進む時代の農福連携のさらなる展開」の中で活動事例を紹介している。

 廃校となった小学校の花壇を利用して、イチゴなど多様な野菜を育て好評だったという。筆者の岡村毅健康長寿医療センター研究副部長は「都市部の高齢者の中には地方で生まれ育った人も多く、農業を懐かしく感じる傾向がある」と分析。「都市の高齢者は緑を求めている」という仮説を立て、参加者の健康指標を評価して有効性を検証する。

 岡村副部長は「認知症の人や介護者が安心して暮らせる社会を作るには、病院や施設だけでは不十分で、寺院などのこころの平安をもたらす場所が必須」と指摘する。

 すでに浄土宗総合研究所と協力して寺院での介護者カフェを全国で展開しており、中には野菜の栽培や棚田の再生などの農福連携を手掛ける寺院もあるという。

 さらに岡村副部長の考察は100年後の未来に及ぶ。ロボットや人工知能(AI)に依存した介護は「上策には思えない」とみており、「100年後の人生の終末期は農村で農業をしている(中略)懐かしい環境の中で人生最期の時を過ごし、土にかえる」と見通す。

 欧州でも介護と農業の連携は「ケアファーム」という形で教会や修道院で育まれてきた。「寺院と農はとても親和性がある」というのは、現場での調査に裏付けられた興味深い仮説だ。


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