「研究紹介」 移動店舗で地域とつながる 農林金融10月号から
2021.10.10
金融機関の経営環境は厳しさが続いており、支店や出張所の統廃合が相次いでいる。利用者にとっては店舗が遠くなるだけでなく、待ち時間も長くなり不便極まりない。特に自動車を運転できず、パソコンやスマートフォンを使いこなせない地方の高齢者にとっては死活問題だ。
金利の上乗せや振込手数料の免除などでインターネットの利用へ誘導するだけでは済まないのが、JAバンクや郵貯銀行、信用金庫や信用組合など地域に密着した金融機関の悩みだ。その解決の切り札になりそうなのが、自動車で巡回する移動店舗とスマートフォン教室だ。
農林中金総合研究所の重頭ユカリ調査第1部長は、「農林金融」2021年10月号に所収の「農協における金融包摂の取組み」の中で、移動店舗やスマートフォン教室の実態を紹介している。
JAそお鹿児島では、移動店舗が訪れる停留所で交流会などを開き、JAぎふでは一部の停留所で出張朝市や「なんでも相談会」を定期的に実施しているという。台風や豪雨などの際に移動店舗を派遣するなど、災害時への対応も可能で、山形県のJAおいしいもがみや、JAやまがたの例を紹介している。
スマートフォン教室については、JA香川県の事例を紹介し、金融取引だけでなく、ネットショッピングの利用が可能になり、SNSを使った組合員間のコミュニケーションが深まるなど社会参加の効果があると指摘。重頭部長は「金融包摂だけでなく、より広く社会的包摂にも貢献できる可能性がある」と結論付けた。
移動店舗を導入する場合、保安面も含めた現金を運ぶコスト、これまでのトラブルの有無など、メリットだけでなく課題についても知りたいと感じた。