「研究紹介」 ベーシックインカムは「両刃の剣」か 生活協同組合研究8月号から
2021.09.20
生活に必要な最低限の金額を一律給付する「ベーシックインカム」(BI)の第一印象は、多くの人にとって「働かなくても収入を得られるのだから大歓迎」というものだろう。従ってその実現をめぐる議論ではもっぱら財源に焦点が当たり、その財源として現代貨幣理論(MMT)の妥当性が問われる傾向が強い。
しかし、BIはもっと根本的なところにさまざまな論点があり、生協総合研究所の「生活協同組合研究」2021年8月号は特集「ベーシックインカム(BI)ー究極の貧困対策か罠か」で、BIは「両刃の剣」ではないかと問い掛けている。
他の補助金や現物給付を廃止することにより「小さな政府」につながるのではないか、仕事をしない人にとっての「生きがい」とは何かなど、5人の専門家が、BIの長所、短所を様々な角度から論じている。
BIではないが、農業分野では欧州連合を中心に直接支払いの導入が進んでいる。支給条件の設計次第では、「農村では誰でも受給できる」というBI型に移行する可能性を秘めている。その時に地域の共同体はどのような姿になるのだろか。
最近の農業政策は、研究機関や普及員を整理し「現物給付」を縮小し、「お金を配って終わり」という傾向を感じる。BIをめぐる議論は、農業生産や農村振興にも強い示唆を与える。