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食品ロス半減目標達成?  野々村真希 農学博士  連載「口福の源」

2024.07.22

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 6月に政府から、日本の食品ロスの発生量の最新値が発表された。2022年度の推計値であり、食品関連事業者から生まれる食品ロスと家庭から生まれる食品ロス、ともに236万トンで、合計472万トン。過去最少となった。政府は食品ロスについて、2000年度の発生量を基準として2030年度までに半減することを目標に掲げているが、その目標値が489万トンなので、8年前倒しで目標達成したことになる。

 しかし、半減目標の基準となる2000年度は、食品ロス量の推計方法が現在の方法とは異なっており、発生量が過大評価されていたことが指摘されている。

 現在、事業系食品ロスの量は、食品リサイクル法のもと食品事業者が報告する食品廃棄物量に基づいて推計されているのだが、大正大学の岡山朋子教授と帝京大学の渡辺浩平教授によれば、2007年の食品リサイクル法改正以前は、そのような食品廃棄物量の報告義務がなかったため、政府による調査によって食品廃棄物量が算出されていたという。そしてその調査のサンプリングに偏りがあったために、食品廃棄物量と食品ロス量が過大に推計されていたとしている。

 家庭系食品ロスの量については、現在は、一部の地方自治体が実施する家庭ごみの組成調査(ごみ袋を開封して中の組成を調べる調査)のデータに基づいて政府が推計しているのだが、そのような詳細な推計が行われるようになったのは2012年以降である。それより前である2000年度の家庭系食品ロス量の推計方法がわかる資料にはなかなかたどり着けないのだが、近似式を使うなどして推計に推計を重ねた値であることは間違いない。

 人口の減少や高齢化などにより食料の消費量自体が減少傾向にあることも踏まえると、このたびの目標達成は必然だったようにも思われる。もちろん、食品ロスに対する社会の関心は年々高まっていて、政府も事業者も市民もさまざまな取り組みを展開しているから、その成果はきっとあるはずだと信じたい。けれど、この「目標達成!」がひとり歩きしないことも一方では願う。

 半減を達成したのは事業系で、家庭系食品ロスは目標未達で減少ペースが鈍いところも気になる。消費者の努力が足りないぞなどというつもりは全くなくて、むしろ、普通に生活していれば自然と食べ物を無駄なく食べきれるように環境を整えていかないといけないと思っている(例えば、冷蔵庫だってもっと中を見渡しやすいデザインにできるはずだ)。現時点ではそのような環境設定についてのアイデアが圧倒的に不足しているのだ。

 消費者にモノを買わせるにはどうしたらいいかはこれまでいっぱい研究されてきたのだから、そろそろ、モノを無駄なく使い切ってもらうにはどうしたらいいかを考えるほうにシフトしてくれないものかなあ、と切に思うこのごろである。

(Kyodo Weekly・政経週報 2024年7月8日号掲載)

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