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【マーケットリポート】中国の栄養保健機能食品市場(前編)  NNA

2024.07.18

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 今回と次回の2回に分け、中国における栄養保健機能食品市場を見ていく。ここで取り上げる栄養保健機能食品は主に栄養機能食品と保健機能食品の2種類に分類できる。栄養食品製造は、新食品原料と栄養成分を豊富に含むその他の従来食材を原料とし、通常食品の製造技術で製造される主食・副食食品の生産を指す。(写真はイメージ)

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 保健機能食品の製造は、特定の保健機能が表示されている食品で、体の調節機能を持ち、治療を目的とせず、人体に急性、亜急性または慢性の危害を発生させることはなく、ビタミン、ミネラルの補給を目的とする栄養素補給等の保健機能食品の製造を指す。

 ・栄養機能食品

 乳幼児用均質化食品:肉類均質化食品、均質化野菜、果物均質化食品、均質化混合食品、乳幼児食用穀物食品

 栄養機能セット食品:オーツ麦栄養機能セット食品、カルシウム補給セット食品、麦芽乳、食品サプリメント製品、その他栄養機能セット食品

 はちみつ栄養機能製品:ローヤルゼリー添加天然はちみつ、ローヤルゼリー製剤、生ローヤルゼリーパウダー、その他はちみつ栄養機能製品

 スポーツ栄養食品、その他の栄養機能食品

 ・保健機能食品

 免疫機能調節食品、アンチエイジング食品、記憶力改善食品、発毛育毛促進食品、疲労回復食品、ダイエット食品、抗低酸素食品、抗放射線食品、抗変異原性食品

■中国市場の状況


 ・中国の栄養保健機能食品産業は下記のステップを経て発展してきた。

 (1980~90年)1980年以前、中国国内の栄養保健機能食品は、伝統的な滋養食品が主流で、多くが薬酒の形で存在し、保健薬品と保健機能食品の区別がなかった。1985年に楊振華氏が「851栄養液」の開発に成功し、中国の栄養保健機能食品のマーケティング発展が幕を開けた。

 (1991~96年)社会経済の急成長に伴い、栄養保健機能食品は消費のトレンドとなり、新しい剤形や品目の登場が産業の急速な発展を促した。「三株」や「太陽神」といった有名企業も続々と登場した。1995年、米アムウェイが中国に進出し、直販方式で市場の発展をけん引した。96年には「保健食品管理弁法」等の一連の政策実施が開始され、初期の業界のプランニングが行われた。

 (1997~2008年)各法規が徐々に成熟し、栄養保健機能食品に対する消費者の受容度も次第に高まった。人々の生活水準が向上するにつれ、栄養や健康への意識も一段と高まり、より多くの海外ブランドが中国市場に進出し始めるようになった。2005年、「保健食品登録管理弁法」が公布された。

 (2009~15年)09年の「食品安全法」で、特定の保健機能をうたう食品を厳しく監督することが要求され、保健機能食品市場は次第に規範化が進んでいった。12年、越境電子商取引(越境EC)の試験運用が開始され、「Swiss」など多くの海外ブランドが中国市場に参入。15年末までに、合計1万5373品目の製品に保健食品としての認定マークである「青帽子」マークが付与された。内訳は、中国製が1万4711品目、輸入品が662品目。保健機能食品は、新たな時代に足を踏み入れ、秩序ある発展を遂げた。

 (2016年~現在)16年の「保健食品登録・届出管理弁法」等の関連法規は、保健機能食品の管理における新たな規定となり、保健機能食品の新政策による管理が始まった。

■業界の特徴


 ・新型コロナウイルス流行の影響で若年層の健康意識が高まり、栄養保健機能食品は若年層に急速に普及した。より多くの年齢層で、栄養保健機能食品の受容度が高まりをみせている。

 ・市民の所得水準の向上と生活の質向上に伴い、消費者の健康的で質の高い生活に対する欲求はますます際立ってきており、栄養健康産業全体の発展のための良好な基盤となっている。

 ・ますます厳しくなる規制環境は、業界の適者生存を促進し、保健機能食品市場を効果的に浄化し、栄養保健機能食品に対する消費者のニーズや要望を高め、業界の長期的かつ健全な発展に寄与している。

 ・市場競争は激しく、ブランド数の多さや製品の種類の多さ、価格競争が激しいといった面に表れている。健康と養生への消費者のニーズは高まり続け、市場での競争は激化の一途をたどっている。

 ・阿里巴巴集団(アリババグループ)傘下の「阿里健康」と京東集団(JDドット・コム)傘下の「京東健康(JDヘルス)」は中国をリードする2大医療健康ECプラットフォームで、2017~22年の消費の伸びは速く、中国の人々の健康関連製品のオンライン消費意欲の高まりを反映している。

 ・ECプラットフォームは栄養健康食品の販売チャンネルを広げ、特に新ブランドはECプラットフォームに展開することで、オフラインの販売網を構築するコストを大幅に節約することができるため、業界の発展がさらに促進されている。

 ・「ライブコマース」(ライブ配信型インターネット通販)は17年以降急速に発展しており、セールスの達人やトップクラスの配信者が来店して出演するなどし、EC発展の重要な推進力となっている。ライブコマースは栄養健康食品業界の成長を推進する重要な要素となると予想される。

 ・22年のメーカー数は5635社。

 ・政府の関連政策、業界法規、基準の整備などの段階的な公布や実施に伴い、業界の監督管理もますます厳しくなり、業界の規範化度や参入条件も高まり、業界の長期的発展と競争構図に大きな影響を及ぼしている。同時に、企業が直面する圧力や課題も増大している。

 次回は主要企業、今後の発展動向予測などについて解説する。(NNA)

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