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衝撃の食感とうまみ、南三陸の生ワカメ  中川めぐみ ウオー代表取締役  連載「グリーン&ブルー」

2024.03.18

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衝撃の食感とうまみ、南三陸の生ワカメ  中川めぐみ ウオー代表取締役  連載「グリーン&ブルー」の写真

 あなたの好きな鍋食材は何ですか? 肉、海鮮、野菜、加工品などさまざまだと思いますが、私のベスト3には「ワカメ」が入ります。(写真はイメージ)

 こう話すと不思議な顔をされますが、ワカメのしゃぶしゃぶ鍋を振る舞うと、ほぼ100%の確率で納得してもらえます。

 それというのも私がオススメするのは、よく見かける緑色のワカメではありません。加工前の茶色い"生ワカメ"なのです。この生ワカメを沸騰させた出し汁にさっとくぐらせると、手品のように一瞬で緑色に。軽くポン酢を付けて口へ運ぶと、驚きのシャクシャク食感と優しいうまみに感動します!

 この感動を与えてくれたのが、宮城県・南三陸の漁師、高橋直哉さん。ワカメやホタテの養殖などを行いながら、漁業や釣りの体験プランを提供しています。

 知人の紹介で、ワカメ収穫と釣りの体験に伺ったのが6年ほど前。当時は釣りが本命で、ワカメ収穫は〝ついで〟だったのですが、その楽しさとおいしさにハマってしまいました。

 高橋さんのワカメ収穫体験ができるのは、3〜4月の日曜日。集合時間に浜へ向かうと、高橋さんをはじめ3人の漁師さんと、10人ほどの参加者がいました。最初はワカメの生態や育て方に関するプチ授業。小さなお子さんにも分かりやすいよう、手作りの紙芝居を使います。

 授業の後は、いよいよ船に乗って養殖場へ。穏やかな湾内を10分も進むと、目標であるブイ(海に浮かぶ漁具)が見えてきます。そのブイに付いたロープを船に積んだ機械を使って引き上げていくと、海底から巨大な影が。さらにロープを引き上げると、横8メートル、縦2メートルほどの茶色い壁が現れます。そう、この壁こそが養殖された生ワカメの集合体なのです。

 参加者は、この壁を好きなだけ刈り取ってOK。とは言っても、1本1本が巨大で、思わず躊躇(ちゅうちょ)してしまいます。漁師さんに教えてもらいながら全員で20分ほど格闘しましたが、ワカメの壁の4分の1も刈り取れずに終了。それでも大きなカゴに山盛り数個分の生ワカメを収穫しました。

 浜に戻ったら、そのまま加工体験に。メカブ、茎ワカメ、普段いただくワカメ(ひだ)に1本ずつバラしていきます。

 そして最後がお待ちかねの実食タイム。ここで初めて生ワカメしゃぶしゃぶをいただいたのですが、衝撃の食感とうまみに感動!小さなお子さんたちも奪い合うように食べていました。

 体験中は私をはじめ皆が驚いたり感動したり、わーわーと騒ぎっぱなし。そんな私たちを見て、高橋さんたちはずっとニコニコしていました。こうした浜と食卓をつなぐ活動が増えると、今以上に海産物本来の魅力が伝わり、大切に食べ続けようと思う人が増えていきそう...。そんな可能性を感じられる、すてきな体験でした。

(Kyodo Weekly・政経週報 2024年3月4日号掲載)

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