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「話食」と「話飲」  安武郁子 食育実践ジャーナリスト  連載「口福の源」

2024.03.18

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「話食」と「話飲」  安武郁子 食育実践ジャーナリスト  連載「口福の源」の写真

 「話」という漢字は「言」に「舌」で成り立っています。舌は、味を存分に味わうと同時に、話したり、語ったりあったりするためにも大いに活用したいものです。(画像:ⓒ食育推進団体イートライトジャパン)

 そして、「話」や「語」という漢字には口が二つずつあります。すてきな会話は口が複数あって初めて生まれると感じさせる漢字です。口は、人と人とのコミュニケーションの重要なツールです。そして、食卓では食事を味わい、会話を楽しみ、語り合うことで、人とのつながりを育む豊かなコミュニケーションの場となります。

 造語である「話食」は、「わしょく」。日本の伝統的な食文化「和食」を想像させる風情が込められています。旬の食材を使い、季節感を表現して目でも楽しめる和食。素材を生かした繊細な味をよく咀(そ)嚼(しゃく)し、舌で味わい、言葉で語り合うことが大切だと感じさせます。

 同様に、「話飲」は、「わいん」。ここでは、ワインという上質な飲み物が連想されます。上品なワインを楽しむように、言葉を交えながら飲食する「話飲」は、笑顔や喜び、共感や感動が交差するすてきな時間をもたらします。言葉のやりとりが食事や飲み物をより豊かにし、くつろぎの時間を生み出します。食べることが単なる栄養補給や空腹を満たすだけでなく、心身の健康を促進する素晴らしい手段となります。

 〝老い〟は避けることができないものですが、日頃の口(こう)腔(くう)ケアと良食習慣が健康寿命を延ばす大きなカギとなります。会話は、口腔の健康にも影響を与えます。

 「話食」と「話飲」を通じて、食べることと話すことの素晴らしさを再発見しましょう。口腔ケアと良食の実践は、これからの100年時代において、健康寿命を積極的に延ばす方法といえます。

 私たち人間の最後まで残る欲の一つである「食欲」。いつまでも好きなものを口から噛(か)んで味わう「口福寿命」を延ばしたいものです。口腔の健康が良好であれば、食べることが楽しくなり、また良食習慣も身につきやすくなります。

 「話食」と「話飲」はコミュニケーションの一環として、食べ物や飲み物を通じて心がつながる理想の食事体験です。口腔からの健康づくりが人生の喜びや豊かさをもたらすことを実感していただければ幸いです。健康な未来を共に築くために、毎日の食事を通して口福時間を過ごしてみてください。

(Kyodo Weekly・政経週報 2024年3月4日号掲載)

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