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【マーケットリポート】中国のコーヒー市場(前編)  NNA

2024.03.21

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 今回と次回の2回に分け、中国におけるコーヒー市場を見ていく。ここで取り上げるコーヒー製品には、インスタントコーヒー、コーヒーが含まれ、コーヒー飲料は含まれない。主要調査対象は、インスタントコーヒー製造業者とコーヒーチェーン店。(写真はイメージ)

■中国市場の状況


 ・中国のコーヒー産業は下記のステップを経て発展してきた。

 (19世紀)19世紀に初めてコーヒーが中国に持ち込まれた。世界的な茶の原産地であり、数千年にわたって茶に親しんできた中国の人々には、当初は大衆的な消費習慣や意識の面で外来の飲み物に対する軽視があったため、コーヒーが中国に伝わってからかなり長い間、コーヒーの栽培や消費は人々に十分に重視されず、コーヒー産業の発展は極めて遅かった。

 (1990年代)1989年にスイス系食品大手ネスレが中国でインスタントコーヒーを発売。テレビ、新聞、屋外などで大規模な広告宣伝を行い、中国人に「苦くないコーヒー」を普及させた。中国の消費市場におけるコーヒーの受容度は、ネスレの手で0から1への立ち上げを実現した。以後数十年、中国のコーヒー消費市場はインスタントコーヒーが絶対優位を持ち、ネスレは常にリーダーの地位にあった。

 1999年、米スターバックスが中国市場に正式に進出し、北京市の中国国際貿易センターに中国本土1号店をオープン。中国が本格的にレギュラーコーヒーの時代に入ったことを示す出来事となった。

 (2000年以降)2017年以降、中国のコーヒー市場は急速に拡大し、高級インスタントコーヒー、レギュラーコーヒー、コンビニコーヒー、ファストフードコーヒー、ティードリンク店のコーヒーなどが続々と登場。「ラッキンコーヒー(瑞幸珈琲)」、「マナーコーヒー」、「Mスタンド」、「Nowwaコーヒー」、「Seesaw(シーソー)コーヒー」、「コッティコーヒー(庫迪珈琲)」など中国発の新興ブランドや、米「ブルーボトルコーヒー」、異業種から参入してきた新茶飲料ブランド、さらに天津名物の肉まん店「狗不理包子」や漢方薬店「同仁堂」などの老舗が続々とコーヒー製品を投入し、若者を取り込もうとしている。中国人のコーヒーに対する受容度が高まり続けるなか、中国のコーヒー市場は開拓が進み、コーヒー業界は急速な発展を遂げる黄金期を迎えた。

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■業界の特徴


 ・中国のコーヒー市場が拡大し、地方都市にも浸透している。1級都市(沿海部大都市)と2級都市(地方大都市)ではニーズの多様化と機能性を求める消費行動が主流になっているのに比べ、34級都市(中・小規模の地方都市)の消費者は消費習慣や所得水準などの要因に制約され、価格への敏感度が高い。

 ・コーヒーの消費量は明らかな地域分布の差異があり、コーヒーショップの地域展開は集中度が比較的高い。2022年の中国のコーヒーショップ店舗数は10万店超で、地域別に見ると、華東、華南、西南地区のコーヒーショップ数はそれぞれ全国の38%、23%、15%を占めた。都市別では、1級、新1級(1級都市に次ぐ規模の都市)、2級、3級でそれぞれ19%、28%、20%、15%を占める。中国のコーヒーショップの6割以上が華東と華南にあり、5割近くが1級都市と新1級都市に集中していることになる。

 ・近年は2級、3級都市での消費量の伸びが顕著になっている。市場に占める割合も高まり続けており、今後20年のコーヒー市場のけん引役になると見込まれる。

 ・中国のコーヒー市場は「価格帯」を基準とする競争の構図を形成しつつある。「40元(約820円)以上」の高価格帯は高級コーヒーに分類され、消費者のニッチな需要を満たし、高いブランド力を持つ。「15~40元」はメジャーなコーヒー消費市場となっており、スターバックス、ラッキン、マナー、カナダの「ティム・ホートンズ」などブランドが最も多い。

 ・現在のコーヒー市場では中国ブランドが台頭し、チェーン店の数を急速に増やしている。

 ・コーヒードリンクが急速に発展しているものの、インスタントコーヒーの消費量は依然として年々増加傾向を示している。

 ・インスタントコーヒーメーカー数は129社。コーヒーチェーン店の店舗数は4万9,750店(2022年時点)。

 次回は主要企業、今後の発展動向予測などについて解説する。(NNA)

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