インドネシアへ鮮魚輸出を促進 富山・石川県が主導、商談成立も NNA
2024.03.28
富山県や石川県がインドネシアで鮮魚の販路を拡大しようとする動きがある。各県が主導して水産品の輸出を促進する背景には、日本国内で市場が縮小するなかで、人口が多く所得の伸びも大きいインドネシアで販売を拡大させ、県の漁業維持を図る狙いがある。富山県は首都ジャカルタで水産品のフェアと商談会を実施。10社以上との商談成立にこぎ着けた。
2023年12月、ジャカルタの日本食レストランに、中・高級スーパーのバイヤーやホテル関係者が集まり、商談会が開かれた。提供されたのは、富山県産の水産品やキノコを使用した和食中心の料理。富山県内の中小企業の技術開発、販路・流通拡大などを支援する富山県新世紀産業機構(富山市)が実施した事業で、事業に参加した県内企業の担当者らが直接バイヤーやホテル関係者に食材に関する説明を行い、その反応を確かめた。
商談会に先立ち、同年11月には同じ店で富山県産品フェアを実施していた。レストランでの県産品フェアと商談会をセットで実施するのは、富山県として初めての試みだった。
同機構の伍嶋二美男理事長は、「まずはフェアで県産品の認知度向上を図るとともに、消費者から直接フィードバックをもらうことで、どういう工夫をすればもっと売れるか、より付加価値を高められるか、ヒントが得られる」と説明。どのような商品が好評だったか、消費者の声を基にバイヤーと商談することで、成約率の向上につなげる。伍嶋氏は、「富山湾の宝石」とよばれるシロエビや深海域に住む紅ズワイガニは、素材の良さを消費者やバイヤーに評価してもらったと語り、インドネシア市場で受け入れられる感触を得たと述べた。(写真上:商談会に参加した富山県新世紀産業機構の伍嶋理事長=右端=や地元バイヤーら関係者=23年12月、ジャカルタ特別州、NNA撮影)
日本からの鮮魚輸入や、インドネシアでのフェアや商談会のプロジェクトをとりまとめるのは、ユナイテッド・トレーディング・サービス(UTS、沖縄県浦添市)だ。インドネシア拠点のクリック・イート・インドネシアが、法人向けフードデリバリープラットフォームを運営する中で、インドネシアにおける鮮魚需要の拡大見通しや潜在顧客へのビジネスチャンスを感じ、23年8月から日本からの鮮魚輸入を手がけている。
富山県や石川県で水揚げされた水産物を、いかに鮮度を保ってジャカルタに配送するかが重要となる。UTSは水揚げされた魚を沖縄県の拠点で受け取り、微細化気泡(ナノバブル)を含む水でえらや胃の中を洗浄し、魚体全体を抗酸化処理する。鮮度を維持した状態で、沖縄県から台湾を経由してインドネシアに空輸する。沖縄からジャカルタのレストランまでの輸送期間は2~3日。
クリック・イートの青柳健一最高経営責任者(CEO)によると、富山県産品の商談会を経て、現在インドネシアの卸売業者やホテル・レストラン関係の10~15社が同県から水産物を輸入するようになった。取扱品目は、アジやブリ、ヒラマサ、ヒラメ、サバ、カキ、ホタテなどで、1カ月あたり約500キログラムを輸入販売している。
クリック・イートは、今年2月中旬~3月初旬、ジャカルタの日本食レストランで石川県産品フェアも開催した。1月1日に発生した能登半島地震からの復興支援としての側面もある。地震では能登地方の海岸が隆起。漁港や市場などの施設が使用できなくなり、漁獲量は激減した。2月に入りようやく漁に出られるようになったものの、被災前に比べると漁獲量はまだまだ少ない。依然厳しい状況の中で水揚げされた石川県産のブリ5本のうち3本が、ジャカルタに運ばれた。
(石川県産品フェアで提供された、同県の海産物を使用した料理の品々=2月、ジャカルタ特別州、NNA撮影)
石川県シンガポール事務所の北田拓也所長は、インドネシアは人口も多く、所得水準も向上していることから、同県の水産物の販路を拡大できる潜在性があると指摘。今回はフェアのみの実施だったが、今後はインドネシアのバイヤーを石川県に招待しての生産者とのマッチングイベントなどにも支援を拡大していきたいとの考えを述べた。(NNA)
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