暮らす

自然豊か、子育てに力の徳之島  小島愛之助 日本離島センター専務理事  連載「よんななエコノミー」

2023.11.20

ツイート

自然豊か、子育てに力の徳之島  小島愛之助 日本離島センター専務理事  連載「よんななエコノミー」の写真

 鹿児島県の奄美群島が1953年12月25日に日本に復帰してから70年を迎える。そこで、奄美群島で2番目に大きな島、徳之島を紹介したい。徳之島は群島のほぼ中央に位置し、徳之島町、伊仙(いせん)町、天城(あまぎ)町の三つの自治体で構成されている。面積約248平方キロ、周囲89・2キロの石灰岩性カルスト地形が発達し、天然の海蝕洞(かいしょくどう)や波食によって生じた海蝕台など独特な景観が見られる。

 人口は2万1千人超。〝長寿の島〟であるとともに、合計特殊出生率が高く、子宝の島としても有名だ。奄美群島全域に受け継がれている結(ゆい)の精神による助け合いが子育てに反映され、子どもは地域全体の宝として育てられる。同時に、三つの自治体の子育て支援策で相乗効果をもたらしている。

 アクセスは、那覇、奄美大島、鹿児島からフェリーを利用するか、鹿児島または奄美大島から航空機を利用するのが一般的。フェリーの場合は、マルエーフェリーが鹿児島から15時間、那覇から9時間30分、奄美大島から3時間20分で運んでくれる。航空機の場合は、日本エアコミューターで、奄美大島から30分(1日2往復)、鹿児島から1時間(1日4往復)という短時間の空の旅である。

 徳之島はまた、闘牛の島としても知られる。スペインの国技である闘牛は、マタドール(闘牛士)が突進してくる牛をかわすという競技だが、徳之島の闘牛は牛同士を戦わせる。初場所(1月)、春場所(5月)、秋場所(10月)と年3回の全島一大会が行われ、3町の協会が持ち回りで主催する。この島の闘牛の特色は、「ワイド! ワイド!」の掛け声で会場が盛り上がり、興奮の坩堝(るつぼ)となる。

 徳之島の見どころは、闘牛に限らない。

 島は2021年7月26日に奄美大島、沖縄島北部および西表島とともに世界自然遺産に登録されたほどの自然の宝庫だ。徳之島町にある金見崎(かなみざき)ソテツトンネルは、ソテツの群生でできた約200メートルにわたるトンネル状のアーチで実に壮観。トンネルを抜けると、太平洋と東シナ海を同時に見渡せる展望所がある。

 伊仙町には夕陽の名所、犬田布岬(いぬたぶみさき)があり、そこには徳之島沖合で撃沈された戦艦大和の慰霊碑が建っている。

 天城町では「ムシロ瀬」をおすすめしたい。海岸線に続く花こう岩の岩棚で、ムシロを敷き詰めたように見えることから、そう名付けられた。

 そんな徳之島の今年一番の話題は、ウェブソリューションサービスを展開する「コウズ」(大阪市)と徳之島町が包括連携協定を結んだことだろう。これにより、IT・ICTの底上げによる地域の活性化と、小中学生から企業に至るまでの一貫したIT・ICTの推進を通じて、中長期にわたり、よりスマートで持続可能な「ITアイランド徳之島」を確立することを目指すこととなった。デジタル社会が進展する中で、IT・ICTの活用とそれに携わる人材の育成は喫緊の課題であるといえる。徳之島町で今回始まった取り組みが、全国の離島の成功モデルとして、先駆けとなることを期待したい。

(Kyodo Weekly・政経週報 2023年11月6日号掲載)

最新記事