木材を巡る利用規制緩和や人材育成を 赤堀楠雄 林材ライター 連載「グリーン&ブルー」
2023.11.13

木材需要の主要な受け皿である住宅着工の不振が続いている。国土交通省の統計によると今年8月の新設住宅着工戸数は前年同月比9・4%減の7万399戸となり、3カ月連続で前年実績を下回った。木造戸建て住宅が多い持ち家はさらに深刻で、8月は同5・9%減の2万994戸で21カ月連続の減少となった。
新築住宅の需要は、少子化や既存の住宅が大量に余っていることなどから今後大幅に減少することが確実視されている。住宅資材に関わる業界は深刻な需要不振に直面することになり、林業・木材業界も例外ではない。現在の状況はその予兆とも見ることができる。
マーケットの縮小には供給量を絞り込むことで対応するのが一般的だ。そうでなければ量がだぶつき、価格が暴落する恐れがある。現実に現在の木材市況は、需要不振に直面する中で価格は完全に低落傾向になっている。
だが、需要が減少するのをただ眺めていればいいわけではない。供給量をやみくもに増やさないようにしつつも、販路開拓の努力は必要だ。具体的には、現在40%台の木材自給率を高めて輸入木材のシェアを奪うことができれば、国産材のマーケットを維持拡大することへの希望は持てる。今後はそのための努力が一層必要になる。(写真:市街地に建てられた自動車ディーラーの木造店舗。規制緩和で住宅以外の需要を喚起したい=筆者撮影)
その観点から考えなければならないのが、今後の林業施策の在り方である。
これまでは、林業機械の導入や丸太を運び出すための路網整備といった生産基盤を強化するための取り組みに多額の補助金が投じられてきた。機械化や路網整備を進めれば生産コストは下がる。だが、コストダウンは価格低下への対応力を高める側面があることに注意しなければならない。価格が下がってもコストは見合うからと生産が続けられれば、値崩れに歯止めがかからなくなる恐れがある。
むしろ、市況悪化が懸念される局面では、生産基盤強化の補助金を減らしてでも需要を増やすための施策に注力する必要がある。具体的には、木材利用に関するさまざまな規制を大幅に緩和することや自ら販路を切り開いていける人材を育成することなどが想定される。それらの施策効果によって、新築住宅の需要減をある程度カバーできる環境を整えたい。
(Kyodo Weekly・政経週報 2023年10月30日号掲載)
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