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幸せで和やかな「和」   安武郁子 食育実践ジャーナリスト  連載「口福の源」

2023.10.23

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幸せで和やかな「和」   安武郁子 食育実践ジャーナリスト  連載「口福の源」の写真

 秋という季節、皆さんは何を思い浮かべますか? 実りの秋、収穫の秋。木々が色づき、紅葉も美しい季節です。この季節、私たちが感じるのは「和」の雰囲気ではないでしょうか。(画像:©食育推進団体イートライトジャパン)

 「和」には「平和」が込められています。秋の自然界は「調和」と「平和」の象徴です。紅葉の美しさ、豊かな収穫がその証しです。自然と調和し平和な風景を楽しみ、幸せを感じることができます。

  行楽の秋は、和気あいあいとした家族や友人とのイベントも増えてきます。山登り、遠足、運動会、キャンプ、ピクニック、屋外での食事はまた格別です。秋の味覚を楽しむ食事は、笑顔と会話を生み出し、心に温かさを運んできます。食事を共にすることは、絆を深め、〝口福な時間〟をもたらします。

 秋の食材は「温和」で「柔和」な風味も特徴です。稲や穀物から作られる料理は、食材の味や風味をそのまま生かし、季節の味を楽しむことができます。秋の食卓に並ぶ料理は、まさに「和」の精神を感じさせます。

 「実るほど頭を垂れる稲穂かな」という言葉にも「和」が宿っています。豊かな収穫に感謝し、謙虚な心を持つことの大切さを教えてくれます。今でもこの時期は各地でお祭りが開催され、神々への感謝をこめて、人々は「和」を楽しんでいます。収穫の喜びを共有し、食への感謝の気持ちを忘れずにいることで、日本人は「和」を育てています。

 言葉や文字から文化や知恵が伝わるといいます。和食は、日本の風土や歴史、季節と調和し、旬の食材を大切にする伝統食です。これは日本人が「和」を尊び、自然に感謝してきた証しです。

 日本風の食事や料理は、私たちにとってなじみ深いものです。和食は多様で、多彩な味わいが楽しめ、地元の食材を大切にします。この「和」の食文化が、私たちに豊かな食生活を提供していたといえます。

 食育は、食べ物の選択だけでなく、食べ方にも関わるものです。自然と調和し、共に「和」を感じながら食事を楽しむことは、心身の健康にもつながります。

 「秋」の訪れを機に、私たちの食卓にも「和」の精神を取り入れてみませんか? 自然と調和し、大切な人たちと笑顔で食事を楽しむことで、豊かな食生活を育みます。そして、「良い食べ方」が世の中に広がることで、私たちの暮らしに「和」の幸せをもたらすでしょう。

(Kyodo Weekly・政経週報 2023年10月9日号掲載)

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