学生対象の〝実践型海洋教育〟スタート 佐々木ひろこ フードジャーナリスト 連載「グリーン&ブルー」
2023.07.17
5月から進行中のプロジェクト「ザ・ブルーキャンプ」は、学生を対象とした実践型の海洋教育プログラムだ。海や水産資源に関する座学、漁場フィールドワーク、レストランでの実地研修などを経て8月の1週間、東京と京都それぞれ8人の学生チームが、自ら企画した「海の未来をつくるシーフードレストラン」を運営する。
弊法人メンバーのトップシェフたちと探究型学習の専門家が最後まで徹底して伴走し、企画の成功と学生それぞれの成長につなげるとともに、このプロジェクトを複数年にわたり続けることで海と水産業、そしてサプライチェーンの未来を支える卒業生コミュニティーをつくることが目標だ。
資源管理施策の遅れをはじめ、さまざまな理由から急速に豊かさが失われてきた日本の海。現状の一端を学ぶため、東京チームのメンバーは6月上旬、伊豆の定置網漁船に乗ってきた。一般的な漁業視察といえば市場や漁協のセリ見学が多いのだが、今回は水産物生産のゼロ番地ともいえる漁船乗船にこだわり、海の魚が食材に変わる瞬間に立ち会いながら、課題に向き合う漁業者の話を聞いた。さらに神経締め処理により商材としての魚に付加価値を乗せる仲買の仕事も見学し、魚を無駄にせず丁寧に流通させることの大切さや現場の思いを学んだ。
「海の問題について正しい情報を伝えられれば、世の中の海の問題への意識は大きく変わると思う」(大学生)
「自分が社会に出たときにどういうことができるのか? も考えたりしている」(同)
「自分の持つ知識を存分に使えて、新たに得ることもできるのがこんなにも楽しいものかと」(調理師学校生)
「どうやったら流れを変えられるのか、もっと知りたいと思うようになりました」(高校生)
この連載を執筆中の現在は、プログラムがスタートしてまだ3週間と少し。座学の講義が継続中のステージだが、学生たちの知識の吸収スピードやその理解の深さに驚嘆する。さらに物事の一側面や一つの意見だけを見るのではなく、多様な視点を学びたい、そのうえで社会を変えていきたいという彼らの柔軟性や強い思いに感動している。
日々成長し、レストラン企画成功に向けて邁進する学生たちの様子と成果を、またこの連載の中でレポートしたいと思う。
(Kyodo Weekly・政経週報 2023年7月3日号掲載)
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