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台湾で植物肉がより身近に  熊本の新興企業が台湾市場で供給  NNA

2023.07.14

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台湾で植物肉がより身近に  熊本の新興企業が台湾市場で供給  NNAの写真

 世界で健康志向の向上などを背景に植物肉への関心が高まっている。台湾でも複数の外食チェーンが植物肉を使用したメニューを販売しており、最近では熊本市のスタートアップ企業が台湾でハンバーガーチェーン「モスバーガー」向けに大豆を用いた植物肉の供給を始めた。同社は台湾でのビジネスを広げるとともに、海外展開を拡大させたいとしている。

 台湾で安心食品服務が展開するモスバーガーはこのほど、植物肉を使ったハンバーガーの新商品を発売した。このハンバーガーの植物肉を作るのが、熊本市のスタートアップ企業「DAIZ」だ。

 DAIZは大豆を用いた植物肉「ミラクルミート」の開発や生産、販売を行う。同社の取締役営業推進部長の広川学氏によると、ミラクルミートの特徴は、油を搾り取ったかすを原材料に使うのではなく、発芽し「植物になった瞬間」の大豆を使うことだという。大豆独特の臭みを抑え、成分バランスや弾力を肉に近づけ、「肉にそっくり」かつ「おいしい」という点にこだわっている。

 台湾のモスバーガーでは、「蔬菠摩力堡(植物肉を使用したホウレンソウバーガー)」と「摘鮮緑蔬菠摩力堡(バンズの代わりにレタスで挟んだ植物肉使用のホウレンソウバーガー)」の2種類にミラクルミートが使われている(写真上、NNA撮影)。価格はそれぞれ単品で105台湾元(約480円)と110元。台湾域内の約300店舗で5月中旬に発売され、7月中旬までの販売を予定している。

 実際に摘鮮緑蔬菠摩力堡を食べてみると、肉の味がかなり再現されていて、大豆からできているとは思えない仕上がり。食感はパサパサした感じがなく、肉のしっかりした弾力も再現されているので食べ応えがあった。

 広川氏によると、昨年開かれた展覧会で、モスバーガーの傘下で同社に製品供給を行う魔術食品がミラクルミートに関心を抱いたことがきっかけで、採用が決まった。

 広川氏は台湾市場の魅力として「素食(菜食主義)の文化が根付いている」「大豆や豆乳を使った製品が普及しており、大豆由来の食品に抵抗感がない人が多い」といった点を挙げた。

 世界人口などの統計を扱う米民間調査機関のワールド・ポピュレーション・レビューが発表した調査によると、2023年の台湾のベジタリアン(菜食主義者)人口は全体の14%、日本は9%だった。単純計算で台湾人のベジタリアンの割合は、日本人の約1.6倍に上る。

カフェやギョーザ店でも

 台湾では他の外食チェーンでも植物肉を味わうことができる。台湾のコーヒーチェーン店「路易莎咖啡(ルイサコーヒー)」では、植物肉を使用したライスバーガーやサンドイッチなど複数のメニューが販売されている。ギョーザチェーン店「八方雲集」は植物肉を使用した水ギョーザや焼きギョーザを提供。中央通信社によると、大手航空会社でも一部機内食に植物肉が採用された。

 22年末には雲林県政府が、行政院(内閣)農業委員会(農委会)農糧署や台湾の代替肉開発大手の弘陽食品(HOYA)などと協力して大豆の新品種の普及に取り組むことを表明。タンパク質含有量が最大40%と高く、植物肉への加工が期待されている。

 今年6月中旬に台北市で開催された台湾最大級の食品見本市「台北国際食品展(フード台北)」のメインテーマは、「未来の食品」と「持続可能(サステナブル)な食品」だった。主催する台湾政府系貿易振興機関の中華民国対外貿易発展協会(TAITRA)の黄志芳董事長はメディアの取材に対して、「植物肉は未来と持続可能のどちらの価値観にも当てはまる」と強調した。

 TAITRAの数位商務処の洪芸綺氏は、「健康ブームにより、今年は植物肉が話題だ」と分析し、台湾の消費者、産業、政府ともに植物肉へ高い関心を持っていることがうかがえた。

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(熊本県のスタートアップ企業、DAIZはおいしさにこだわった植物肉ミラクルミートを製造している、DAIZ提供)

世界でビジネス拡大へ

 DAIZは今後、台湾のモスバーガーでの商品化をきっかけに台湾でビジネス拡大を目指す。広川氏は、現在も台湾企業と商品販売に向けて協議段階にあると明らかにした。さらに台湾を足掛かりとして、中国や東南アジア諸国連合(ASEAN)などのビジネス展開を拡大していきたいとした。欧州についても「植物肉市場の成長率の高さから、力を入れていきたい地域」とした。

 広川氏は「海外の植物肉市場の規模や需要の高さを考慮し、今後より積極的に台湾を含めた海外企業へアプローチしていく」と意気込んだ。

 25年には日本国内外の需要に対応するため2カ所目となる工場を熊本で建設する予定だ。(NNA

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