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挑戦を続ける女性農業者たち  青山浩子 新潟食料農業大学准教授  連載「グリーン&ブルー」

2023.06.26

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挑戦を続ける女性農業者たち  青山浩子 新潟食料農業大学准教授  連載「グリーン&ブルー」の写真

 新型コロナウイルス感染症が猛威を振るっていた当時、6次産業化に取り組む農家への影響を懸念した。農家レストランや観光農園など、顧客に現地に足を運んでもらうビジネスに力を入れる農業者ほど、打撃は深刻だろうと思ったのだ。追い打ちをかけるように、生産コスト上昇で経営環境はいっそう悪化している。(写真はイメージ)

 こうした状況に農家はどう対応しているのか―。2023年春、6次化に取り組む女性農業者8人に、コロナ禍および生産コスト上昇という苦境をどう乗り越えようとしているかをヒアリングした。

 コロナの影響は品目や売り先によって明暗が分かれた。飲食店への納めが多い稲作農家は、外食不振のためマイナス影響を被った。一方、スーパーや直売所などに卸す野菜農家は、巣ごもり需要でプラスの影響を受けたという。

 ただ稲作農家であっても、座して待つ女性は皆無だった。新潟県で園芸とコメを生産し、自ら直売所を運営する女性経営者は、巣ごもり需要に着目し、いままで行っていなかったコメの店頭精米を始めた。すると3040代の女性に好評で、コメ販売のてこ入れにつながったという。「精米したてのコメがこんなにおいしいと知らなかった」といわれたそうだ。

 茨城県の農業法人の女性は、コロナ後に注文が増えたコメの輸出に力を入れた。10年前から地道に輸出先を開拓し、商社経由ではあるものの、欧米の飲食店やスーパーと直接やりとりし、好みのコメの輸出に取り組んでいる。国内の飲食店への納めは減ったものの、「輸出があったことで(経営が)救われた」と話していた。

 攻めの姿勢を見せたのはコメ農家だけではない。山梨県の果樹農家は、生産するブドウの半分を庭先販売してきたが、コロナ禍で店頭販売を自粛せざるを得なくなった。そこで、作業風景などを撮影し、動画サイトで発信しながらオンライン販売へのシフトを促したところ、一定の効果があったという。秋田県でコメ・野菜を生産する傍らで、漬物の加工をしてスーパーに出荷している女性は、「巣ごもり」「家飲み」という生活様式に対応すべく、あらかじめカットした「食べきりサイズ」の漬物を増やした。調味料の値上げが激しく、漬物の価格も改定したにもかかわらず、売り上げは変わっていないという。

 それでもなお、生産コスト上昇の壁は厚く、いずれの女性もコロナ前の売り上げまで戻っていないという。5月末に発表された食料農業農村白書でも取り上げられたが、コスト上昇時の価格転嫁を含む農産物の適正価格の形成など、セーフティーネットとなる仕組みづくりは喫緊の課題となろう。食料安全保障という観点からも実効性のある制度が求められる。だが、制度のこと以上に、農業を支えてもらう立場の消費者には、挑戦を続ける農業者の奮闘ぶりを知ってもらいたい。共感し、応援したくなる産業にしていく必要がある。

Kyodo Weekly・政経週報 2023612日号掲載)

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