海の未来、次世代と一緒につくりたい 佐々木ひろこ フードジャーナリスト 連載「グリーン&ブルー」
2023.06.12
この5月、私たち「Chefs for the Blue」は、新しいプロジェクトを立ち上げた。魚の減少が止まらない海の現状と、その現実に対する危機感が広がらない社会の課題から啓発活動を続けてきた私たちだが、若者との協働プロジェクトはこれが初めてとなる。
「THE BLUE CAMP(ブルーキャンプ)」は、東京と京都それぞれで募集する高校生や専門学校生、大学生を対象とした3カ月間の集中プログラムだ。研究者や行政官、漁業者、流通事業者など多様な講師による座学や産地フィールドワークで得る海や水産業の学びと、トップレストランでの調理、サービス、マネジメントの実技研修を経たのち、8月に1週間、学生が自分たちでゼロから企画した「海の未来をつくるシーフードレストラン」を運営する。またこの全プロセスを通して、Chefs for the Blueのシェフ4人(写真)と探究型学習支援の専門家が徹底的に伴走する。
生産者や流通事業者から調達した食材を自ら加工し、その場で消費者に届けるレストランは、長く複雑なサプライチェーンの流れを可視化しやすい場所だ。入り口(生産者)と出口(消費者)それぞれの情報を相互に受け渡ししやすく、お互いの心の距離を縮めることができるのもレストランの強みといえる。そんな場所を舞台に、その企画運営という得難い経験を通じて、今後あるべき海と社会のあり方を考えてほしいと願っている。
スケジュールの都合により、今年の募集期間はなんとたった9日間。十分な応募者が集まるだろうかと不安な思いで応募ページを開設したのだが、結果的に不安はまったくの杞憂だった。見る間に応募が積み重なり、募集定員16人に対し80人もの学生が集まったのだ。
応募にあたって提出必須とした1000字のエッセーには、海への深い思いや課題、未来への希望など、それぞれの真摯な言葉がつづられており心打たれた。今まさに面談を進めているステージだが、選考の難航は必至で頭を抱えているところだ。
今後3カ月間、このような素晴らしい学生たちとともに走れることを心から感謝するとともに、彼らの将来や海の未来に資するプログラムにできるよう全力を尽くしたいと考えている。
(Kyodo Weekly・政経週報 2023年5月29日号掲載)
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