信州そばをインド巨大市場に初出荷、日本縮小で NNA
2024.05.30
信州そばの乾麺製造を手がける柄木田(からきだ)製粉(長野市)が、インド向け製品を初出荷した。人口減少や食生活の変化で日本の販売量が伸び悩む中、人口14億人超を抱えるインドに信州そばの乾麺を投入し、販売拡大をうかがう。今回の出荷に合わせ、製品を一から開発し、包装袋は英文表示にした。同社にとって事実上の海外初挑戦だが、乾麺そば売上高の海外比率を今後3年間で10%にする方針だ。(写真上:インド向け出荷開始を発表した柄木田社長<左端>と小里博栄氏<左から2番目>ら=5月24日、長野市、オンライン配信よりNNA撮影)
柄木田製粉の柄木田豊社長やインドで「日本食普及の親善大使」(農林水産省が任命)として活動する小里博栄氏が5月24日、長野市で記者会見を開き、明らかにした。今回の試みは、柄木田社長と小里氏が2023年12月に知人の紹介で初対面したのが始まりで、約5カ月間かけて出荷製品を開発した。
製品名は「柄木田プレミアム信州そば」(200グラム)。一番粉と甘皮粉をベースに黒粉(外皮)をバランス良くひきこんだそば粉を使い、風味やなめらなかな食感、のどこしにこだわった。そば本来のおいしさを意識しつつ、販売価格を高くし過ぎないよう、そば粉の割合は3割や10割ではなく、5割を選んだ。柄木田製粉の川中島工場(長野市)で製造する。
■包装袋に英文表示とベジマーク
インド食品安全基準局(FSSAI)の基準を満たした英文表示を、シール方式ではなく、包装袋に直接載せた。直接記載は、信州そばとしてはもちろん、日本そばとして初ケースとみられる。
包装袋には、インドでの受け入れやすさを考え、認知度が低いそば単品ではなく、そばサラダの写真を調理方法と一緒に掲載。動物由来成分が入っていないことを示す「ベジマーク」を付け、国民の3割前後に当たるベジタリアン(菜食主義者)が安心して食べられることをアピールする。
(インド当局の基準を満たした英文表示を直接載せた包装袋)
輸出入業者を通じてインドに卸し、電子商取引(EC)大手の米アマゾン・コムのインド版サイトやホテル、レストラン、カフェで販売・提供してもらう。最高小売価格(MRP)は595ルピー(約1130円)で、柄木田製粉が日本で販売する類似製品の3倍。日本そばである点や、日本そばの中でも高い知名度を持つ信州そばである点、健康に良い点を訴え、市場を開拓する。アマゾンでは6月に販売開始となる見通し。売れ行きを見つつ、製造・出荷の頻度を増やす。
小里氏によると、インドのそば市場は現在、「ほぼゼロの状態」。小売店や飲食店のごく一部でそばを買ったり、食べたりできるものの、中国産など日本以外の製品が多い。アジア料理店を含め、日本食を提供する飲食店は約200店あるとみられ、そうした店への営業活動も成功の鍵を握る。そばサラダだけでなく、柄木田製粉のそばを使ったやきそば、そばずしなど多岐にわたるメニューを提案する予定だ。
包装袋には、「Made in Japan for the World」とも記した。将来的に、バングラデシュやスリランカといった周辺国、欧米、中東に加え、空港など日本でのインバウンド(訪日客)向け販売を検討する。
■人口減で日本販売量は縮小
日本の人口減少や食生活の変化を背景に、柄木田製粉の乾麺そば販売量は近年減っている。米国向け輸出を約5年前から行っているものの、販売額は乾麺そば売上高全体の1%未満。柄木田社長は日頃、海外販売を強化したいと考えていた。24日の会見で「信州そばを世界に発信したい」と話した。
(インド向け信州そば乾麺を手にする柄木田製粉の柄木田豊社長)
小里氏も会見で、「一昔前のインド人は価格に敏感と言われることが多かった。近年は価値ある商品にお金を使うようになっている。うどん、ラーメンに続き、そばの普及に力を入れたい」と述べた。
柄木田製粉は1939年に創業し、80年以上の歴史を持つ。2023年6月期の売上高は56億円で、うち8割を小麦粉製粉事業、2割を乾麺そば製造事業が占める。(NNA)
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