豪産牛肉、日本での販売価格の方が安い? NNAオーストラリア
2024.05.25
オーストラリア牛肉協会(ABA)が実施した調査で、日本のスーパーマーケットで販売されるオーストラリア産牛肉の価格が、オーストラリア国内での販売価格を下回っていることが判明した。このため、オーストラリアの大手スーパーが価格をつり上げているとの声や、日本を含む主要な輸出先の経済状況が悪化している兆しだとする見方が浮上しているが、業界アナリストやエコノミストらは、単なる価格の比較だけでこうした結論は導けないと指摘している。業界各誌が伝えた。(写真はイメージ)
ABAは4月に、東京とオーストラリアのスーパーで販売されるオーストラリア産牛肉の価格を調査した。この結果、当時の為替レートを基に算出した炒め物用の薄切り牛肉は、東京では1キロ当たり19.80豪ドル(1豪ドル=約104円)だったのに対し、オーストラリアの大手スーパーのコールズとウールワースでは同20-25豪ドルだった。ランプステーキ肉は東京で同22豪ドル、オーストラリアでは同28豪ドル、カレー用などの角切り肉は東京で同18.90豪ドル、オーストラリアでは同20豪ドルと、いずれも東京での販売価格のほうが安かった。
オーストラリア畜牛産業カウンシル(ACIC)はこの結果について、日本のスーパー業界では10%以上の市場シェアを有している企業はなく、オーストラリアに比べて厳しい市場競争が価格を抑制していると分析。ACICのガンソープ氏は、「輸送費や輸入関税を含めても日本での販売価格がオーストラリア国内の価格を下回っているのは、オーストラリアの大手スーパーによる寡占状態が消費者に高い価格を押し付けていることを示す証拠だ」と述べた。
■結論出すには不十分?
ただ、エコノミストや業界アナリストらは、1回きりのこうした調査による価格比較には強い意味合いはなく、意義のある結論を導くには、多くの地域で百を超えるサンプルを比較する必要があると指摘している。
市場分析会社エピソード3のアナリスト、ダルグレーシュ氏は、「海外で売られるオーストラリア産牛肉が、国内価格より安いことは珍しくない」とし、特に日本のような市場では、オーストラリア産牛肉は他国産と競争を強いられていると分析した。
国内外に牛肉を供給している加工会社も、オーストラリア市場ではブラジル産のような安価な海外産牛肉との競争がなく、輸送コストもかからないため、マージンは高い傾向にあるとしている。
(オセアニア農業専門誌ウェルス(Wealth) 5月24日号掲載)
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