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2030年に市場規模2100億円へ  食料変えるアグリ・フードテック  廣瀬愛 矢野経済研究所フードサイエンスユニット研究員

2023.04.14

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2030年に市場規模2100億円へ  食料変えるアグリ・フードテック  廣瀬愛 矢野経済研究所フードサイエンスユニット研究員の写真

 近年、激化する気候変動などの影響から、世界の食料事情が不安定さを増す中、アグリテック・フードテック関連の市場が注目を集めている。(写真はイメージ)

 国内の農業の課題は、農業従事者の減少と高齢化が挙げられる。従事者の平均年齢は2010年の66.1歳から22年には68.4歳へ上昇している。今後、高齢農業者のリタイアが増加すると見込まれることから、国内農業の活性化を図るために、ロボット技術や情報通信技術(ICT)などの先端技術を活用し、超省力化や高品質生産等を可能にするスマート農業が注目されている。

 ICTの活用による農作物の栽培条件の最適化、高い生産技術を持つ篤農家の技術・ノウハウのデータ化による生産性向上、生産から消費までの情報連携などにより、消費者のニーズに対応した農作物の生産や付加価値の向上が期待される。

熟練者の技術を再現


 今後は衛星利用測位システム(GPS)などによる農業機械の自動運転の実用化、センサー等により得たビッグデータの解析により、熟練生産者が行ってきた技術の再現、病害虫の発生予測、収穫時期・収穫量の予測といった可能性にも期待が掛かる。

 植物工場は一定の気密性を保持した施設内で、植物の生育環境(光の質や強度、光を当てる時間、気温、湿度、CO²濃度、養分、水分など)を制御して栽培を行う施設である。植物工場では、季節や天候を問わず、野菜などの植物を計画的に安定生産できる特徴がある。

 完全人工光型植物工場は生育に適した環境に制御され、加えて多段栽培方式が採用されることで、栽培面積当たりの生産効率が高められている。さらに水の使用量を露地栽培の90%以上削減できること、工場内で発生する作業の自動化により、人的作業が最小限に抑えられることなどのメリットがある。栽培品目ではレタスなどの葉菜類やハーブ類のほか、果菜類のイチゴなど、新しい栽培品目についても取り組みが進められている。

水産や昆虫食で新展開


 世界の1人当たりの年間水産物消費量は、この50年間で約2倍に増加している。国際的な水産物需要の高まりから、世界的に養殖生産が拡大していく中、世帯構造の変化や食生活の変化により、定質・定量・定価格・定時に対応しやすい水産物が求められる傾向がある。

 国内外の地域の需要に応じたマーケット・イン型養殖業の実現に向け、ICT技術を活用した自動給餌機システムや沖合養殖システムなどの「スマート水産」、陸上で養殖する「陸上養殖システム」、魚粉量を少なくした「低魚粉飼料」、昆虫を原料とした「昆虫タンパク質飼料」などの次世代型養殖技術が注目される。省人・省力化や成長の良い品種の開発、昆虫タンパク質・微細藻類・単細胞タンパク質などの魚粉代替飼料開発といった取り組みが進んでいる。

 植物由来の代替肉や代替シーフード、培養による代替肉や代替シーフード、昆虫タンパクなど、新しい原材料や製法による代替タンパク質が、持続可能性や動物福祉、食料安全保障などの点から注目されている。培養食品は、定義や、原材料や製造工程に関する安全基準、食品表示などの整備が進むことが想定される。今後は植物由来と培養のハイブリッド製品などの研究開発が進む可能性があり、代替タンパク質市場の動向が引き続き注目される。

総合市場2000億円超へ


 矢野経済研究所の調べでは、日本国内の2021年度のアグリテック・フードテック総合市場(スマート農業、植物工場、次世代型養殖技術、代替タンパク質)は、7184700万円となった。30年度にはその3倍に迫る21127700万円に拡大すると予測する。

 今後は食料生産の枠組みが変化する可能性がある。量・品質・価格などの安定を図り、事業者や実需者、消費者に資するとともに、既存の産業のイノベーションを促進し、より高付加価値の商品を生み出す助けとなることで、市場が拡大することを期待する。

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