「料理五輪」で日本12位 仏ボキューズ・ドール、代表シェフ競う 畑中三応子 食文化研究家
2023.04.03
1月22日と23日、「ボキューズ・ドール」が仏リヨン市で開催された。日本での知名度はそれほど高くないが、「料理オリンピック」「美食のワールドカップ」と呼ばれる国際的なフランス料理コンクールだ。ここで表彰台に上ると、世界のトップシェフとして認められる。
プラッター(大皿盛り)、プレート(一皿盛り)の2部門で競われ、今回プラッターのテーマ素材はアンコウとホタテ貝。プレートは「子どもの喜ぶ料理をコース仕立てで(Feed The Kids)」という大テーマが掲げられ、テーマ素材はカボチャと卵だった。
背景にはコロナ禍や戦争、紛争、飢饉などで世界の子どもたちが心身にさまざまな影響を受けたことがある。社会と環境への貢献を評価する賞も設けられ、料理に何ができるかというメッセージを強く感じさせる大会となった。
東京・銀座のレストラン「アルジェント」の石井友之さんが代表選手として出場した日本チームは、アジア勢では最高位だったものの、出場24カ国中12位にとどまった。優勝はデンマーク、準優勝はノルウェーと近年常勝の北欧勢が並び、3位は初の入賞となったハンガリー。社会貢献賞はメキシコに授与された。(写真:日本チームの面々。左から2番目が代表選手の石井友之さん=ひらまつ提供)
前回は主催国のフランスが8年ぶりに優勝を果たし、マクロン大統領も来場して歓喜したが、世界のフランス料理は多様性とその国らしさが重視されるようになっている。
うれしいことに、日本チームは特別試食審査員として参加した子どもたちの「一番大好きなプレート賞」に選ばれた。彼らは石井さんのもとに駆け寄って「日本の料理が一番おいしかったのに」と悔しがってくれたそうだ。
石井さんは先輩シェフがボキューズ・ドールに出場する姿を見て33歳で代表選手になろうと目標を定め、その通り実現させた。
日本代表になるには、書類審査、西日本と東日本に分かれた実技審査を経て、国内大会決勝で勝たなくてはならない。次にアジア・太平洋予選があり、今回は参加14カ国から日本、中国、韓国、ニュージーランド、オーストラリアが通過し、本戦に出場した。実に狭き門である。
日本チームは2週間前にリヨン入りし、キッチンつきホテルで連日連夜、通し練習を繰り返した。本番では予定の材料や道具が使えなかったり、コンロの火力調節ができなかったりと数々のトラブルに見舞われ、「50〜60%の実力しか出せず、順位は妥当だった」と石井さんは振り返る。
ただ、会場に集合していた世界の一流シェフたちから、2日間で1年分の知識を得られた実感がある。また、上位入賞した作品の多くを試食する機会に恵まれ、「勝てる味のベクトル」が把握できた。
「コンクールは世界中の技術と情報が集まり、広がる場所」と石井さん。帰国し、次は史上初の日本優勝という目標を立てたばかりだ。「世界で一番グルメな国」といわれる日本、ぜひ実証してほしい。
(Kyodo Weekly・政経週報 2023年3月20日号掲載)
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