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地域と学校つなぐ生徒たち  高校の「総合的な探求の時間」  陣内純英 西海みずき信用組合理事長

2023.02.13

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地域と学校つなぐ生徒たち  高校の「総合的な探求の時間」  陣内純英 西海みずき信用組合理事長の写真

 学校の教科に「総合的な探究の時間」というのがある。自己の 在り方や生き方を考えながら、課題を発見し解決していくための資質・能力を育成すること、つまり、生きる力を育むことを目指している。高校では、地域課題をテーマとしたプロジェクトに取り組むことも多い。

 素晴らしい教科だが、指導する先生方には並々ならぬご苦労があるようだ。昨年先生方と共同開催した勉強会で、1人の先生が「実は、地域と学校の間には高い壁が存在するのです」と吐露された。先生方が日頃、地域、とくに事業者などと接する機会は少なく、生徒たちに地域課題を把握させ、解決策を見いだすよう指導したいと思っても、どこからどう手を付けてよいか戸惑うと言う。

 そこで、われわれに対して「ぜひ、地域と学校をつなげる架け橋となってほしい」と熱い期待が寄せられた。地域密着の実践に試行錯誤しているわれわれからすると、学校は地域のどまん中にあるように見えていたが、逆に先生方から見れば、金融機関の方が地域のまん中にいる存在なのだ。

 われわれが「総合的な探究の時間」のことを知ったのも、数年前、ある高校の先生から、地元の事業者を紹介してほしいとの要請があったからだ。「高校生のためなら」と、多くの飲食店や菓子店が協力。一緒に企画したり作ったりした商品を、生徒たちがイベントで販売した。チラシ、声掛けなどの集客努力も実り、短時間で完売。街を活気づけるプロジェクトとして上々の成果を上げた。

 われわれは今年、全国規模で高校生のプロジェクトの発表会を開催しているNPO法人と連携し、長崎県大会の事務局を引き受けている。先日リモートで開催された発表会では、校則など身近な問題に取り組むチームがある一方、伝統工芸を高校生らしいセンスで盛り上げようとするチームや、子ども食堂・フードロス・空き家問題など社会課題をテーマにしたチームも多かった。(写真:リモートでプレゼンする高校生=202319日、筆者撮影)

 統計などの分析、関係者へのインタビュー、アンケートなど、きちんとリサーチした上で問題点をあぶり出し、解決のために何らかのアクションを起こしていた。

 発表を聞いて、50年前、自分が高校生のときは受験勉強ばかりで、地域課題などには全く無関心だったことを恥ずかしく感じた。より多くの高校生が、こうした大会出場チームと同レベルに達するとよいと思う。そのためにも、われわれは地域のまん中でハブの役割を担っていることを自覚し、地域と学校をつなぐ架け橋となって、生徒たちの生きる力を育むことに全面的に協力していかなければならないだろう。

 地域の事業者などとつながることが難しいと感じている先生がおられたら、遠慮せずに金融機関に相談していただきたい。

(Kyodo Weekly・政経週報 2023年1月30日号掲載)

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