震災からの復興と離島振興 宮城県女川町 小島愛之助 日本離島センター専務理事 連載「よんななエコノミー」
2024.02.05

元日に能登半島地震が起きると、宮城県女川町は6日、備蓄していたアルファ米や野菜ジュース、ポリタンク、非常用飲料水袋など生活物資を被災した石川県志賀町に提供し、その3日後には副町長ら職員4人を現地に派遣した。女川町は、東日本大震災の復興支援で志賀町から2015年度に事務員、19年度に保健師の派遣を受けており、同じ被災地として手を携えていこうとしている。
その東日本大震災によって女川町も壊滅的な被害を受けたが、「あたらしいスタートが世界一生まれる町へ。START! ONAGAWA」をスローガンに、急ピッチで復興まちづくりを行ってきた。その効果もあって、女川駅や駅前商店街(シーパルピア女川)を中心として、かつてのにぎわいが戻ってきている。また、大震災の被害を千年後まで伝え、命を守りたいという思いから、町内21カ所には「いのちの石碑」が建っている。この石碑は、大震災の年に中学校に入学した子どもたちがプロジェクトを立ち上げ、建設資金の調達や石碑のデザインなどを行ったものである。
女川町には、人口が50人足らずの江島と約90人の出島の二つの有人離島があるが、このうち出島を今回は紹介したい。出島は、女川町の沿岸から一番近いところで300メートルほどしか離れていない。そのため、本土と島を結ぶ全長364メートルの橋を建設する出島架橋の整備事業が17年からスタートし、昨年11月に橋の中央部分が設置された。今後、道路の整備などが進められ、ことし12月に開通する予定である。
出島への交通アクセスは、シーパル女川汽船の「しまなぎ」で女川港から20分。出島架橋が開通すれば、女川の市街地から車で15分に短縮されるという。時間・距離の短縮はもちろんのこと、病気やけがなどの緊急時にすぐ搬送できないという問題が解消し、住民の安心な生活につながるという点も大きい。一大漁業基地であり、釣り客のメッカでもある島と本土が陸路でつながることで、島の産業が継続的に営まれていくというメリットも多大である。
出島には縄文時代の配石遺構があり、「出島ストーンサークル探検ツアー」の実施主体となっている「一般社団法人 女川未来会議出島プロジェクト」は、架橋後の町施設の管理をはじめとして、島の観光など各種事業の発展と創出に関わる支援を行うことにあるという。
同プロジェクトの代表理事を務める高野信さんは福島県郡山市出身の元教員。定年後に教員時代の上司の故郷である出島に半ば移住した。架橋の効果も相まって、離島観光が女川町の復興に大きく寄与することを期待したい。
(Kyodo Weekly・政経週報 2024年1月22日号掲載)
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