山あいの暮らしを潤す小さなサンタたち 赤堀楠雄 材木ライター 連載「グリーン&ブルー」
2024.01.29
昨年12月23日に新潟県村上市北部の高根集落で、地元の子どもたちや若者がサンタクロースに扮(ふん)し、集落の全世帯160戸にプレゼントを届けるというイベントが開催された。「メリークリスマス!」の声とともに小さなサンタたちが玄関の扉を開けると、住人たちは満面の笑みで出迎え、「なんてかわいらしい」、「ありがとう」などと声をかけながらプレゼントを受け取った。用意していたお菓子のプレゼントを子どもたちに手渡す住人もいた。(写真:小さなサンタの来訪は集落の人たちを喜ばせた、筆者撮影)
「クリスマス大作戦」と銘打たれたこの催しは、地元で地域づくりに取り組む「一般社団法人高根コミュニティラボわぁら」(わぁらは「私たち」を意味する方言)が企画し、有志の協力を得て2017年に始まった。子どもたちが参加したのは今回が初めてだ。
20年には、コロナ禍のために年末年始の帰省を見合わせざるを得なくなった家族からの手紙やプレゼントをひそかに用意して届け、住人たちを喜ばせた。
昨年末のプレゼントは、集落の昔の様子を写した古い写真をあしらったカレンダーと子どもたちの手形が押されたお正月飾り。カレンダーへの反響は大きく、事務局を取り仕切る能登谷創さん(37)のもとには「こんな写真、どこにあったんだ?」「あそこに写っているのは誰だ?」といった電話が次々とかかってきた。
能登谷さんは22歳の時に埼玉県から移住してきた。同い年で神奈川県出身の妻の愛貴さん、4歳の長男、0歳の長女の4人暮らし。高根生産森林組合に勤めつつ、地域の暮らしを未来につなごうと愛貴さんとともにわぁらを立ち上げた。「最初にこのイベントを開催した時、『私のところに初めてサンタクロースが来た』と涙を流して喜んでくれたばあちゃんがいたんです。あれを見た時に『やってよかった』と心から思いました」と話す。
山あいの集落では、隣近所が力を合わせ、気持ちを通い合わせながら自然のただ中での暮らしを成り立たせてきた。年寄りを含む大人たちは次世代を担う子どもたちが遊んだり、いたずらをしたりする姿に心を和ませながら日々の営みに精を出した。
集落の一員で、わぁら理事の鈴木信之さん(62)は、クリスマス大作戦について「(このように住人同士が気持ちを通い合わせることは)昔からこの地域では当たり前だったこと」と目を細めて語った。
(Kyodo Weekly・政経週報 2024年1月15日号掲載)
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