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避難先でも口腔ケアに歌  安武郁子 食育実践ジャーナリスト  連載「口福の源」

2024.02.12

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避難先でも口腔ケアに歌  安武郁子 食育実践ジャーナリスト  連載「口福の源」の写真

 能登半島地震で被害に遭われ、今も困難に直面している方々に心よりお見舞い申しあげます。そして、地震の影響で亡くなられた方のご冥福をお祈りしています。

 地震発生から3週間が過ぎました。テレビでは自衛隊の方々が分断された道を歩き、懸命に支援されている姿が映し出されています。そして、毛布をかぶり暖を取ろうとされている高齢の方の姿。石川県の被災地は、私が暮らす東京とは比べものにならない寒さだと感じます。

 私の故郷の熊本でも2016年4月に大きな地震がありました。父の出生地、益城町が震源地でした。なじみの街並み、シンボルである熊本城の姿などをテレビで目にして、いても立ってもいられない思いでいっぱいになり、涙がとめどなく流れてきたことを思い出しました。

 この思いをどこに持っていけばいいのか。すぐに駆けつけることもできない無力さを痛感しながら、遠く離れていてもできることは何か? 今の私にできることは何があるのか? そう自分に問いかけていました。そして、私が当時黙々と取り組んだことは、「避難所での口腔(こうくう)ケアの大切さ」を訴える投稿でした。

 阪神・淡路大震災でも、口の中で増殖した細菌が肺に入って引き起こす誤えん性肺炎が原因で、避難所で生活する多くの高齢者が亡くなりました。この引き金の一つが口腔内の衛生状態の悪化です。

 水や歯磨き粉が不足する生活の中で後回しにされがちな口腔ケア。怠ると口の中に細菌が発生し、肺炎以外にも呼吸器感染症に陥る可能性が高くなります。ライフラインが断絶された避難所生活でも、口腔の衛生状態を保つことは極めて重要です。

 自浄作用や抗菌作用などがある唾液を分泌させることも大切です。食欲がなくても、少量でいいので時間をかけて噛(か)んで食べること。唾液の分泌が促進されます。唾液が出やすいように唾液腺マッサージもおすすめです。

 そして、この誤えん性肺炎の予防は、口腔ケアだけでなく、口腔のフレイル(衰え)予防に取り組むことも重要です。このオーラル(口腔)フレイル予防のためには、口を動かし、口の周りの筋肉や呼吸機能を維持することが大切です。

 そこで、最も手っ取り早くオーラルフレイル予防に取り組むことができる方法をここでお伝えさせてください。

 それは、「自分が好きな歌を歌うこと」です。高齢の方が歌える歌、世代に応じた流(は)行(や)りの歌、口ずさみたくなる曲を避難所などで流してください。歌うことで、口唇や舌の機能を維持することができます。唾液も分泌します。さらには、えん下機能維持(誤えん予防)や呼吸機能を維持することができます。そして、なにより元気が出てきます。話すこと、歌うことの効果は絶大です。ぜひ取り入れてほしいと願っています。

(Kyodo Weekly・政経週報 2024年1月29日号掲載)

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