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台数増加、メニュー豊富に  フードトラックの魅力  野村亮輔 アジア太平洋研究所研究員

2022.11.21

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台数増加、メニュー豊富に  フードトラックの魅力  野村亮輔 アジア太平洋研究所研究員の写真

 最近、フードトラックを街中でよく見かけるようになった。場所も駅前のみならず、公園や住宅街などこれまであまり見かけなかったところでも出店されている。東京福祉保健局の調査によれば、東京都で営業が許可された調理可能な移動販売車は2021年3月末時点で4000台超の水準となっており、年々増加傾向で推移している。

 このようにフードトラックが増えた一因として、コロナ禍の長期化が考えられよう。巣ごもり需要などによるテイクアウト需要の増加や飲食店などで営業時間の短縮や休業要請がされていたこともあり、密を避けてサービスを提供できる移動販売に転換した人も多いのではないだろうか。そこで筆者なりに利用者と出店者の双方の視点からフードトラックの魅力を考えてみた。

 まず利用者の視点から考えれば、実店舗に行かずとも、実際に店舗が提供している味を楽しむことが挙げられるだろう。最近では「デニーズ」や「松屋」など大手外食チェーンもフードトラック事業に参加しており、その場でしか味わえない限定メニューもあり好評を博していると聞く。

 さらには「ミシュランガイド東京 ビブグルマン」にも掲載された鰻料理で有名な「わたべ」などもフードトラックを出店しており、店で提供されている値段より少し抑えられた価格帯で商品が提供されている。このように、売られている商品をみれば、弁当や総菜のみならず、価格帯の高いものもあり、利用者にとって選べるメニューが豊富なのは魅力であろう。

 次に出店者の視点から考えれば、実店舗以外のエリアにおける顧客の新規開拓ができる点が挙げられよう。前述したように営業可能であれば、ビジネス街以外に、住宅街や大学のキャンパス内においても出店できるため、ビジネスマン層に加えて、若年層やファミリー世帯層への認知も高められよう。出店場所については近頃、地域活性化も兼ねて各自治体と連携し、遊休地などを活用して場所が提供される事例が増えていると聞く。

 これまでフードトラックの魅力についてみてきたが、課題としてはやはり出店場所の立地条件だろう。利用者からすれば、分かりやすい場所に出店されているかどうかで利用したくなる頻度も変わってくる。

 一方、出店者からすれば、利用されやすい場所に集まると、必然的に競争相手が増えることになり、いかに提供する商品を差別化できるかが重要となってこよう。顧客を引きつける商品を作るだけではなく、さまざまな場所で出店し、リピーターを増やすことができるかどうかにかかってくる。その際、SNSなどを通じて、出店場所やその日販売する商品などの情報をきめ細やかに発信することが必要不可欠であろう。

(Kyodo Weekly・政経週報 2022年11月7日号掲載)

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