シンガポールの市場開拓を少数型支援に移行 茨城県 NNA
2023.11.10

茨城県が事務局を担う「いばらきグローバルビジネス推進協議会」は、シンガポールで現地市場の開拓事業を強化している。10月末から11月初めにかけて、昨年に引き続き県産食品の商談会や小売店でのテスト販売、店舗視察などを実施。今年は参加する県内企業を昨年の約3分の1に絞り、少数型支援に移行してきめ細かく対応している。今月以降もテスト販売やオンライン商談を計画しており、より効率的・効果的な商機獲得を目指す。(写真上:いばらきグローバルビジネス推進協議会は、シンガポールで商談会を開催した=11月2日、同国中心部、NNA撮影)
いばらきグローバルビジネス推進協議会は、県内の中小企業や農業事業者の海外展開支援に官民連携で取り組んでいる。シンガポールでは昨年11月、常陽銀行(水戸市)に業務委託する形で、県産品の試食会や商談会、テストマーケティングなど企業・消費者間取引(BtoC)、企業間取引(BtoB)向けの複数の取り組みを初めて実施した。
今年は10月31日から11月3日までの5日間にわたって現地で商談会などの各種取り組みを行っている。昨年の経験を生かしながら、より効率的、効果的な需要開拓を目指して多方面で異なる手法を取った。
11月2日までの3日間にわたり実施したバイヤーとの商談会には、現地入りした県内3社の担当者が参加。昨年の商談会に参加した2社も担当者が現地入りして商談会に臨んだ。現地側では小売店や飲食店などバイヤー19社が参加。商談件数は計45件に上った。
さらにオンライン商談を今月から来年1月にかけて随時実施し、県内5社が参加する。現地の商談会に参加した企業を含む取扱商品は、菓子類や納豆、廃棄予定の食品に付加価値を与えて再製品化するアップサイクル商品、日本酒、水産加工品などだ。
テスト販売の店舗拡大
昨年の商談会には県内29社が参加した。今年は日本国内にしっかりとした事業基盤があって現地市場開拓のポテンシャルを有する商品を持ち、輸出意欲が高い企業に絞った少数型支援体制に移行。商談会の開催日数は昨年の1日から3日に増やした。
商談会の場所は2カ所設けたが、要望に応じてバイヤーの事務所などでも行うなど柔軟に対応した。現地入りした5社にはそれぞれ事務局担当者らが付き、現地店舗の視察も盛り込みながら、企業ごとに行程を作成して商談にも同席。オーダーメード型のアテンドを実施することで、より多くのバイヤーと商談できる機会を創出できるようにした。
今回の取り組みの一環としてはこのほか、シンガポールの小売店など5店舗で県産品のテスト販売を実施。昨年の1店舗から大幅に増やした。
西部の商業施設「ジュロン・ポイント」では10月末から11月末にかけて、シンガポールの飲食店運営大手RE&Sエンタープライズと連携。今回の取り組みに参加する県内企業10社全ての商品計15品をテスト販売する。
JR東日本がシンガポール中心部で運営する飲食店「ジャパン・レール・カフェ」や、日本食材スーパー「いろはマート」など4店舗では10月末から12月末まで、商品の特徴に合わせて店舗ごとに異なる商品を販売し、継続取引の可能性を高める。
ネット上で映像を配信しながら商品を売るライブコマースや、飲食店での採用提案も昨年に引き続き実施する。10月31日には今回初の取り組みとして、現地商社や支援機関による現地市場の報告や事業の説明を行った。来年2~3月には今回の取り組みを振り返るため現地バイヤーとの意見公開会を実施する。
昨年に引き続き業務委託を受けた常陽銀行の担当者はNNAに対し、「RE&Sなど現地で事業展開する企業などから寄せられた意見を基に、今年はテスト販売の店舗先を増やすなど工夫をこらした」と説明した。
(商業施設ジュロン・ポイントで行うテスト販売の会場を視察した県内企業の担当者ら=11月2日、シンガポール西部=常陽銀行提供)
RE&Sの担当者は「飲食店を展開する当社としては食材を調達する上で日本市場とのつながりは非常に重要だ。今回の取り組みでは日本市場とのつながり強化に加え、シンガポールで売れる商品を一緒に作り上げたいという思いがある」と語った。
参加企業は手応え
商談会に参加した企業はそれぞれ手手応えをつかんだ。植物性食品を開発・販売する東京バル(つくば市)は昨年に引き続き商談会に挑み、植物由来のジャーキーと、サツマイモの皮などを活用したアップサイクルのスナック商品を売り込んだ。
同社の担当者は「昨年の商談会参加時には、より低価格で現地化した商品が必要だと感じた。その経験を踏まえた新商品を商談会に持ち込んだ」と説明。テスト販売では商品が売れ、商談会でも日系小売店での販売が決まったと付け加えた。
佐々木食品(北茨城市)は揚げもちを紹介した。既に香港、台湾向けに揚げもちを輸出しており、2地域とも販売は非常に好調という。中華系が多いシンガポールに満を持して進出しようと今回の商談会に参加した。
揚げもちは冷凍の状態で、自然解凍すればそのまま食べられる。冷たい状態でも温めてもおいしいが、RE&Sでのテスト販売では同社から「現地では温めた方が売れる。2本1セットより1本ごとに販売し、単価は3Sドル(約330円)以下に抑えた方がよい」といった助言を受けた。
納豆の製造・販売を手がける朝一番(土浦市)の担当者は、「シンガポールでは既に小売店で納豆が販売されており、入り込む隙はあるのかと思っていたが、現地入りして参入できると感じた」とコメントした。(NNA 清水美雪)
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