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日本食品の販路開拓 ホタテや日本酒など紹介、インドで展示会  NNA

2023.11.14

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日本食品の販路開拓 ホタテや日本酒など紹介、インドで展示会  NNAの写真

 約14億人の人口を抱える巨大市場インドでの販路開拓を目指し、日系企業各社が日本の食材の売り込みを図っている。首都ニューデリーで115日まで開催された食品展示会の日本専用ブースには約20社が出展し、北海道産のホタテや日本酒、しょうゆ、緑茶などを紹介した。現地では洋食と並びすしの人気が高まるなど、主要都市で食の多様化が進んでいる。

 ニューデリーで35日、インド最大規模の食品産業の展示会「ワールド・フード・インディア」が開かれた。今回は2017年に続く2回目の開催。3日間で約5万人が訪れた。開幕式にはモディ首相が出席し、食品加工業界が過去9年間で5000億ルピー(約8987億円)の投資を集めたとして、急成長中の「サンライズ部門」だと強調した。(写真上:「インドには文化の多様性と同じくらい食の多様性もある」と語るモディ首相=3日、インド首都ニューデリー、NNA撮影)

 世界80カ国から1000社以上が出展した。日系企業は、NPO日印国際産業振興協会(JIIPA、東京都港区)が在インド日本大使館と協力して編成した「ジャパン・パビリオン」に約20社が参加した。

中国影響で水産品の新販路模索


 ジャパンブースに出展したのは、食品メーカーや商社など。日印国際産業振興協会のブースでは、北海道産のホタテや日本醤油工業(北海道旭川市)のしょうゆ、上閉伊酒造(岩手県遠野市)の日本酒などを紹介した。北海道産の冷凍ホタテや乾燥赤ホヤなどを出展したインフィニティ・プラス(札幌市)の川上郁乃社長は、「中国や韓国にホタテやナマコを輸出しているが、処理水放出で中国への出荷が止まったため新しい販路を探している」と話した。今回の展示会での反応次第で、今後のインド展開について判断する方針だ。

 日印国際産業振興協会のゴドガテ・プラシャント理事長によると、同協会のブースで商品を展示したほかの企業も今回の展示会を通じてインドの反応を伺い、反応次第では代理店経由での販売を検討する方針だという。

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(ジャパン・パビリオンを訪れたインド人がホタテやハマチの刺身を試食=3日、インド首都ニューデリー、NNA撮影)

「フルーチェ」の展開に意欲


 ハウス食品グループ本社は、インドでのイベントの参加は2回目。カレールーの「ジャワカレー」と即席デザートベースの「フルーチェ」の試食を提供した。国際事業企画部の太田一彰次長によると、フルーチェが予想以上に好評で、「初日の半日で500食は出た」。

 ジャワカレーは日本で生産したベジタリアン仕様のものを提供。フルーチェはもともとベジ仕様だ。ジャワカレーは商社を通じて間接的にインドに輸出しており、フルーチェはまだ輸出していない。太田氏は、卸売業者経由など新しい販路の開拓を含め、「(これらの製品を)インドで販売していきたい」と力を込めた。

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(予想以上に試食が好評だったというハウス食品グループ本社のフルーチェ=3日、インド首都ニューデリー、NNA撮影)

包装や価格に課題


 食品の輸出を手がけるローヤルオブジャパン(東京都渋谷区)のブースには、インド向けの輸出を担う日本のメーカーの梅干しやラーメン、ソースなどが並んだ。全て企業間取引(BtoB)で、現地の業者を通して飲食店に卸している。

 食品事業部の須藤葉月課長は、「インドはパッケージ対応が難しいため、まずは業務用で始めて需要を創出し、それから企業・消費者間取引(BtoC)を始める」方針だと説明。インド向けの輸出開始から2年がたち、「そろそろ小売りを始めなくてはいけないタイミング」にあるという。メーカーを説得してインド向けのパッケージを作るところから始め、来年はBtoCの輸出が出てくると予想している。「ルール化が進めば、インドに輸出する日本の食品メーカーが増え、向こう10年でインドが輸出事業の主力になるという期待を持っている」と話した。

 インドの北部ジャムに本拠を置くキョート・ビバレッジズ(北部ジャム)は輸入販売を手がける京都の企業の煎茶などを出展した。サヒル・マハジャン(Sahil Mahajan)最高経営責任者(CEO)は大の日本茶好き。今年から日本の緑茶の輸入販売を開始したばかりだが、「インドではすしが人気になっている。緑茶も人気になるはずだ」と自信を示す。

 インスタグラムを通じた問い合わせの多さから、インド人からの興味の大きさは実感しており、課題になるのは価格だ。お茶の関税は100%以上で、商品価格は少なくとも2倍になる計算だ。

 インドでは甘いミルクティーのチャイが主流。「日本茶に慣れるまで時間がかかるだろうが、いかに飲んでみてもらうかが挑戦。カフェや飲食店、小売店と提携してインド人に緑茶を試してもらう機会をつくっていきたい」と話した。

 このほか、日本貿易振興機構(ジェトロ)が日本の水産品の支援で北海道産のホタテ、オザックス(東京都千代田区)がオーストラリアメーカーの植物肉を日本で加工したベジ仕様のギョーザ、マルヤマ食品(和歌山県日高郡)が和歌山県産の梅干し、ひかり味噌(長野県諏訪郡)がみそを提供するなど、各地の日本食材が並んだ。

すし人気が高まるインド


 インドでは日本食の人気が徐々に高まっている。地場食事宅配大手「スウィッギー」が発表した報告書によると、昨年はすしの注文が増加。パスタやピザに並び、注文が多い海外の食事の上位10位に食い込んだ。

 米フランコープの報告書によると、インドの食事サービス市場は2028年までに796億5000万米ドル(約11兆9157億円)に達し、22年の411億米ドルから11.2%の年平均成長率(CAGR)で拡大する見通し。人口の34%を占めるミレニアル世代(1981~96年生まれ)によって、外食の頻度が上昇。食事にかける金額も伸びている。(NNA)

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