関心は「おなか」改善 機能性表示食品、摂取率高い女性60代以上 飯塚智之 矢野経済研究所フードサイエンスユニット主席研究員
2022.11.16
コロナ禍での健康意識の高まりや、新しい生活様式の中で見られる健康問題などを背景に、食品市場で開発・展開が活発化しているのが機能性表示食品であり、このような状況下において、矢野経済研究所は2022年9月に消費者調査を実施し、機能性表示食品に関する認知・摂取状況や関心について、20代以上の5790人から回答を得た。
機能性表示食品を「知っているが摂取したことはない」の割合が、各性別、年代別で4割前後、「知らない」が1~2割前後を占めており、消費者の5割前後が機能性表示食品を知らない、または知っていても摂取したことがないと回答した(下のグラフ、矢野経済研究所作成、以下同)。
摂取率高い女性60代以上
一方、機能性表示食品の摂取状況・頻度に関して、現在摂取している割合は各性・年代においておおむね3割前後であり、うち週1回程度以上摂取している割合(「ほぼ毎日摂取している」と「週に1~3回程度摂取」を合わせた割合)が2割前後で、特に女性60代以上が2割超と高い割合である。
女性60代以上は健康意識が高く、健康食品の有力顧客層であることから、機能性表示食品に関しても他の属性に比べ、摂取率が高いと推察される。
(機能性表示食品の認知・摂取状況)
摂取しやすいサプリメント
現在摂取している機能性表示食品の種類(形態)を聞いたところ、全体では一般食品(サプリメント以外の加工食品)の割合が5~6割を占め、サプリメントが4~5割、生鮮食品が2割超となったが、男性60代だけは一般食品(52.3%)よりもサプリメント(58.6%)が上回っている。
サプリメントは粉末形状を除き、味覚面に左右されにくく、継続摂取に適しているとされる一方、毎日料飲する食品という手軽さに健康機能が付与されている点において、消費者の支持が得られている点が、一般食品の摂取割合が高い理由と推察される。
生鮮食品に関しても、近年徐々に機能性表示食品として受け入れられる品目が増える中で、トマトやバナナなどの消費者に身近な生鮮食品も受け入れられるようになり、食品スーパーなどの店頭にも並んでいることから、手にする機会が増えていると推察する。
関心はおなかまわり、腸内環境
機能性表示食品の代表的な機能性表示について、各機能への関心を調査した。各性別・年代ともに、関心が最も高かったのが「おなかの脂肪(体脂肪・内臓脂肪)・体重減少」であり、2~3割が関心を示した。
"コロナ太り"を気にする層が多いことが示唆される。特に基礎代謝が落ち始め、体重が落ちにくくなり、おなかまわりが気になり始める40~50代で、関心を持つ割合が男女ともに3割超と高かった。
近年、腸内環境への関心が高まる中で、「おなかの調子、腸内環境の改善、便通改善、整腸」が女性50代以下で3割台、女性60代以上と男性の各世代で2割前後を占め、女性および男性の50代以下で第2位、男性60代以上で第3位となっている。
今後の機能性表示食品の摂取意向としては、「積極的に摂取したい」と「関心のある機能性表示であれば」を含めると4割前後が摂取意向を示した(下のグラフ)。消費者が抱える身体上の悩みに合った機能性表示食品の開発・展開と、情報発信により、さらなる需要の喚起が期待される。
(機能性表示食品の今後の摂取意向)
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