「ハラルおまかせ」に県食材を 兵庫県、マレーシアの飲食店と関係構築 NNA
2023.11.03
兵庫県は、農水産物の輸出重点市場として位置付けるマレーシアで、地元業者との継続的な取引関係構築を目指している。その一環として、イスラム教の戒律に従っていることを示す「ハラル」認証を取得した首都クアラルンプールの高級レストランで、県の食材を利用した「OMAKASE(おまかせ)」コースの提供が始まった。
兵庫県によると、農水産物の輸出重点市場としているのは、マレーシア、香港、フランスの3カ国・地域。マレーシアでは、現地にある伊勢丹での県産品フェアなどでテスト販売を続けてきた。兵庫県農林水産部流通戦略課の村上桐子副課長兼ブランド戦略班長は、「テスト販売では地元消費者の生の声を聞くことができ、パッケージや商品の改善に役立ったが、一方で継続的な販売に結びつけることは難しかった」と話す。過去3年間にわたるテスト販売を経て、地元業者との継続的な取引関係構築を目指す時期だと判断したという。(写真上:KAITOのオーナーシェフ、ニザムさん=中央=と、兵庫県農林水産部流通戦略課の村上氏=左、10月、クアラルンプール、NNA撮影)
所得水準でいえば東南アジア諸国連合(ASEAN)内第2位のマレーシアでは、都市部のスーパーマーケットやオンラインサイトなどで多くの日本食材・日本産品が売られている。そうした中で、価格競争に陥ることなく、こだわりある県の食材を売り込むために着目したのが、地元飲食店とのコラボレーションだった。
今回のプロモーションでコーディネーターを務めるアリマ・フード・ラボの有馬幹人氏は「利用客がいる限り食材が消費される飲食店は、まず買い物客に商品を手に取ってもらわなくてはならない小売店よりも回転が速く、売り込みに有利だ」と指摘する。有馬氏は兵庫県出身。日本のハラル認証を取得した食品メーカーでの経験を生かし、マレーシアを拠点にイスラム教徒(ムスリム)向けの販促コンサルティングや、ハラル情報メディアの運営などを手がけている。
■ムスリムにも「おまかせ」浸透
今回のプロモーションでは、地元の卸業者が主催する飲食店との商談会のほか、10月24日からクアラルンプール市内タマントゥンドクターイスマイル(TTDI)地区にあるマレーシア人経営の日本食店「KAITO(カイト)」で、県産品を使用したコース料理を提供する。予算に応じてシェフのおすすめ食材を用いたコースを組み立てる「おまかせ」スタイルで、料理7品とデザートで1人当たり350リンギ(約1万1000円)から。明石のタイやタコ、淡路島のタマネギ、播磨地方の名産品である播州そうめんなどを使用し、日本料理をベースにしたフュージョン料理に仕上げている。兵庫県の食材を使用したプロモーションは11月5日まで。
同店はマレーシア・イスラム開発局(JAKIM)からハラル認証を取得しているためアルコール飲料類の提供はなく、みりんや酢などの調味料もアルコール不使用の製品を使用している。客層はムスリムのマレー系が主だ。
マレーシアでは昨今、「おまかせ」スタイルの高級飲食店がブームとなっている。店の経営者は日系、地場とさまざまだが、客単価の高さやアルコール飲料類を提供できるなどの関係で、華人系を主力顧客とする店が多い。しかし、日系の飲食店などで15年以上修行を重ね、「KAITO」でオーナーシェフを務めるニザムさんは「マレー系の間でも、おまかせスタイルへのニーズは高い」と指摘する。
ハラル認証の取得も、マレーシアで飲食店を経営する際のハードルの一つだ。ムスリムも利用できるよう、イスラム教の戒律に配慮して「ノンポーク・ノンラード(豚肉、ラード不使用)」としている日本食店も多いが、やはり認証がある店は安心してもらえるようだ。有馬氏がソーシャルメディア上で独自に実施したアンケートによると、約3000人の回答者のうち「ハラル認証のある飲食店を優先して利用する」ムスリムは半数以上に上ったという。
2025年の大阪万博開催を前に、兵庫県はムスリムのインバウンド(訪日客)獲得も目指している。村上氏は、おまかせスタイルでの食材提供などを通じ、「県の知名度を上げるとともに、地元のシェフに食材の良さを知ってもらい、継続的な販売先を開拓したい」と話した。(NNA降旗愛子)
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