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「パーソナライズフード」広がる  日本版プラットフォーム構築へ   川崎順子 矢野経済研究所フードサイエンスユニット主任研究員

2022.08.22

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「パーソナライズフード」広がる  日本版プラットフォーム構築へ   川崎順子 矢野経済研究所フードサイエンスユニット主任研究員の写真

 ライフスタイルが多様化する中で、その中心にある「食」についても、パーソナライズ(個人化)が進んでいる。食とITを融合するフードテックの進展に伴い、買い物や調理の時短が進むといった利便性の向上だけでなく、個人の健康状態や嗜好に合わせて食事を最適化する「パーソナルミールソリューション」が可能になりつつある。(写真はイメージ)

 パーソナルミールソリューションには、ユーザーの趣味・嗜好や健康状態、ダイエットやボディーメークでの改善目標に合わせて個別最適化した食品や飲料そのものを指す「パーソナライズフード」のほか、主としてスマートフォンのアプリを活用してユーザーに最適な食事の献立(レシピ)を提案する「レシピ提案アプリ」、アプリが提案するメニューを調理家電に送信することで自動調理も可能になる「スマートキッチン家電」、「フードデリバリーサービス」などが含まれる。

 フードデリバリーサービスには、パーソナライズフードを含む在宅配食(冷凍宅配食)サービスやレシピ提案アプリと連携する生協・ネットスーパー、スマートキッチン家電とつながる食材(ミールキット)宅配などがあり、食の個別最適化の流れと密接に関係している。

 パーソナライズフードやレシピ提案アプリ、スマートキッチン家電はいずれも市場が立ち上がって間もないことから参入プレーヤーが少なく、現時点では対象となる商品やサービスも限定的ではあるものの、新しいテクノロジーへの関心や社会貢献意識が高いとされる若年層を中心に支持が高まっている。

 欧米では、食・キッチンに関わるあらゆる分野をインターネットに接続し、AIや最新のテクノロジーで人や企業を結んで支援する「キッチンテックプラットフォーマー」が躍進している。

 家庭で料理をする消費者の強い味方になるばかりでなく、スーパーや食料品店などの食品小売業者や食品・食材メーカー、そしてスマート家電メーカーにとっても消費者と直接つながり、その消費者にパーソナライズしたマーケティング・製品情報を届けられるという恩恵がある。人気のあるプラットフォーマーと組むことで、消費者に"デジタルファースト" の印象を与え、自社ブランドの強化や売り上げの拡大につながると考えられている。

 日本でも今後はレシピ提案アプリとスマートキッチン家電、フードデリバリーサービスの連携が進み、日本版キッチンテックプラットフォームの構築に向けた動きが加速すると考えられる。

 コロナ禍を契機としたライフスタイルの変化や多様化が後押ししていることもあり、パーソナライズフード企業の参入が各カテゴリーの競争を激化させるというよりも、市場全体を拡大させるとの見方が強い。

 パーソナライズフード、レシピ提案アプリ、スマートキッチン家電、フードデリバリーサービスの4市場を合わせた2020年度の国内パーソナルミールソリューション市場の規模は、事業者売上高ベースで3902000万円だったと推計している。25年度には1484億円に急成長し、30年度には2740億円まで拡大すると予測している。

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