高栄養・持続可能な製品開発 シンガポールの食品メーカー NNA
2023.08.23

シンガポールでフードテック(先端食品技術)のスタートアップが、栄養価の高い製品やサステナビリティー(持続可能性)関連製品の開発を加速している。消費者の間で健康や環境に対する意識が高まっていることが背景にある。政府の支援も受けながら、今後も国内外で市場を開拓する動きが続きそうだ。
シンガポールのアルケミー・フードテック(Alchemy Foodtech)は、主食に含まれる炭水化物や糖分の吸収を調節し、ブドウ糖の放出を抑える働きをする特許製品「アルケミー・ファイバー」を地元食品メーカーに提供。砂糖を使用しないシフォンケーキなどの製造に使われている。(写真:アルケミー・フードテックが販売している栄養価の高い製品、同社ウェブサイトより)
一般消費者向けの製品も開発し、国内200軒のスーパーで展開。フィリピンにも輸出している。今後は米国、タイ、香港、インドネシアなどの市場を開拓する方針だ。
ネクスト・ジェン・フーズ(Next Gen Foods)は、加工度の低い食品を求める消費者のニーズに合わせ、大豆タンパク質、ココナツオイル、オーツ麦繊維など9種類の原材料のみを使用して植物性鶏肉製品「ティンドル」を生産。シンガポール、欧米、中東、香港、マレーシア、日本を含む世界中のレストランに販売している。
サステナビリティー関連の食品を開発しているのは、レス&コ(LESS & CO、旧セーブ・ア・クラスト)だ。同社はパンの耳などの余剰食材を使ってビールを、果物の皮といった食品廃棄物を使って飲料を、それぞれ製造している。
シンフーテック(SinFooTech)は2021年、豆腐の副産物である大豆ホエイを使ったアルコール度数の高い酒「サチ(Sachi)」を発売した。日本酒のような味わいで、フルーティーな香りがする製品だ。
サチは世界でもまだ珍しい大豆を原料とするアルコール飲料で、大豆ホエイから持続可能な方法で醸造。低カロリーで抗酸化物質が豊富、かつグルテンフリーとなる。
植物性タンパク質と細胞培養脂肪を組み合わせたハイブリッド製品を開発する企業もある。ラブハンドル(Love Handle)は今年、オランダの培養豚肉会社ミータブル(Meatable)とハイブリッド肉製品の開発施設を立ち上げる計画だ。
シンガポール企業庁の食品製造・農業技術担当ディレクター、シャロン・テイ氏はNNAに対し、「ハイブリッド製品は本物の肉に近い味になる可能性が高く、細胞培養肉に比べて低コストのため、今後注目すべき分野だ」と語った。
シンガポールのスタートアップの多くは、政府の支援を受けて開設した共有施設や資源を活用し、研究開発(R&D)を進めている。今後も世界のトレンドに合わせて革新的な食品の開発を進め、国内外の市場を開拓していく動きが加速しそうだ。
企業庁は、食品分野でのイノベーションと新製品開発におけるシンガポールと外国企業の協業も引き続き支援する。22年4月には、農産物のバリューチェーン(価値連鎖)を横断する7者の欧州機関が設立した「グローバル・フードチュア・プログラム」のパートナーとなった。
同プログラムは、協業とイノベーションを通じて食品の持続可能な移行を促進するため、欧州のアグリフード関連企業のアジア進出を支援している。今後は欧州の食品メーカーとアジアの食品メーカー、特にシンガポール、日本、韓国、タイとの知識共有と共同イノベーションの促進に向け、ビジネスマッチングなどが開催される予定だ。(NNA Celine Chen)
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