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画像がつなぐ人と人  写真文化首都・東川町  沼尾波子 東洋大学教授

2022.06.13

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画像がつなぐ人と人  写真文化首都・東川町  沼尾波子 東洋大学教授の写真

 北海道東川町は北海道のほぼ中央に位置する、人口約8000人の町である。町の東部は山岳地帯で大規模な森林地域を形成し、日本最大の自然公園「大雪山国立公園」の区域の一部となっている。旭川市と隣接するこの町はいま、人口減少を食い止め、多くの若い世代を呼び込む。何が人を引きつけるのだろう。

 東川町の地域振興の核にあるのが「写真文化」である。町では1985年に「写真の町」宣言を行った。当時、北海道では一村一品運動が推進され、多くの町村が特産品を売りにした取り組みを進めたが、東川町は「写真」による振興を掲げた。

 町の案内によれば、「自然」や「文化」そして「人」が写真を通じて出会い、この恵まれた大地に、世界の人々に開かれた町、心のこもった「写真映りのよい町」の創造を目指すとある。 その後2014年には、写真文化の中心地となる「写真文化首都」として、東川町は名乗りをあげた。

 町では写真に関するさまざまなイベントが開催されている。その一つが写真甲子園だ。高校生3人が1チームとなり、複数の写真で一つのメッセージを伝える組み写真をつくる。予選を勝ち抜いた高校生が全国から東川町に集い、町内でさまざまなテーマの撮影を行う大会である。

 夏には東川町国際写真フェスティバルが開催され、さまざまなイベントが実施される。

 町内の子どもたちに、写真に親しんでもらう写真少年団も設立されている。活動は月2回。一眼レフカメラを持って撮影に行き、作品の講評会をしながら皆で写真を楽しむという。

 写真でどうやって地域振興ができるのだろうと思っていたが、現地を訪問して気づいたことがある。

 東川町には、思わず写真に収めたくなるような美しい景観や自然風景がある。そこで写真文化を掲げ、撮ること・撮られることが日常となると、日々目にするふとした景色に、皆が敏感になるようだ。

 住宅や公共施設なども、デザイン性が高いものが立ち並ぶ。思わず写真に撮りたくなる景色が町の至るところにあった。(写真:町の複合施設「せんとぴゅあ」内にある図書スペース「ほんの森」=3月、筆者撮影)

 撮る・撮られるという行為は、人と人との距離感や、まなざしをも変化させるようだ。撮られるという経験は、自らを客観視する機会をつくる。また、同じ被写体であっても、撮る人によって、切り取る景色は全く異なり、自分や他者が撮影した写真を見比べながら、その多様なまなざしに驚くこともある。そんな体験は、多様な価値観を許容することにもつながりそうだ。

 町の写真文化首都宣言には、「写真文化」を通じて写真と世界の人々をつなぎ、笑顔あふれる町づくりに取り組むことがうたわれてる。

 今の時代、インスタ映えすることが店の売り上げにつながるともいわれる。画像を通じた共感が人と人とをつなぎ、社会や経済を活性化していく。そんな時代のまちづくりの一つの形を見た思いである。

(Kyodo Weekly・政経週報 2022年5月30日号掲載)

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