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代替タンパク質食品が身近に  研究、商品化進む  廣瀬愛 矢野経済研究所フードサイエンスユニット研究員

2022.04.15

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代替タンパク質食品が身近に  研究、商品化進む  廣瀬愛 矢野経済研究所フードサイエンスユニット研究員の写真

 近年、従来の動物性タンパク質の代替として、代替肉や代替シーフード、昆虫タンパクなど、植物性の原料や新しい製法を用いた「代替タンパク質」が注目されている。

 従来の畜肉由来ではない代替肉は、大きく「植物由来肉」と「培養肉」に分けられる。植物由来肉は豆類や野菜などの原材料からタンパク質を抽出し、加熱や冷却、加圧などを行うことにより、肉様の食感に加工した食品を指す。植物由来肉は「プラントベース」などのキーワードで、メディアに取り上げられる機会が増加している。(写真はイメージ)

 培養肉は牛などの動物から採取した細胞を培養して生成される食品を指し、研究開発が進められている。

 培養肉や培養シーフードなどの培養タンパク質では、技術面とコスト面が課題とされてきた。加えて、従来は食用ではない研究用素材での作製が行われていたため、食用可能な素材のみを用いた作製と、食品として提供するための法制度の整備などがハードルとなっていた。

 しかし2022年3月、日清食品ホールディングスと東京大学の研究グループが、「食べられる培養肉」の作製に日本で初めて成功し、「培養ステーキ肉」の実用化に向けて前進したと発表した。

 3Dプリンターを用いた研究では、大阪大学が島津製作所と3Dバイオプリント技術を使用した自動生産装置を共同開発することを発表している。2025年大阪・関西万博での展示を目指しているという。

 代替シーフードでは、植物由来原材料を加工した「植物由来シーフード」がすでに商品化され、魚介類の細胞培養による「培養シーフード」の研究開発が進められている。

 日本では農水産加工品の製造・販売を行うあづまフーズが、植物由来の「まるで魚」シリーズからサーモン、マグロ、イカを販売しており、「代替食品」ではなく、「食べて美味しい次世代食品」として提案が行われている。

 卵でもキユーピーが植物由来の卵代替食品「HOBOTAMA(ほぼたま)」を20216月、業務用で発売した。卵アレルギーの消費者からの反響も大きく、20223月には通信販売での市販を開始した。キユーピーは多様化する食のニーズに応えていきたいとの方針を示している。

 TWO(東京都渋谷区)が運営するプラントベースフード(植物由来の食品)のブランド2foodsは、プラントベースエッグ「Ever Egg(エバーエッグ)」をカゴメと共同開発し、"ふわとろ食感"を再現した「エバーエッグオムライス」を提供している。

 2foodsは「ヘルシージャンクフード」をコンセプトとしており、季節のメニューやコラボレーションキャンペーンなどを展開。渋谷ロフト店・銀座ロフト店には、世界のフードテック企業の展示・体験ができるスペース「FOOD TECH PARK(フードテックパーク)」を併設しており、消費者のフードテックに対する認知度拡大を図っている。

 日本ではライトに健康な食を取り入れる消費者が多く、この層にアプローチするために、日常的に慣れ親しんだメニューと満足感のあるおいしさ、手ごろな価格帯により訴求を図っているという。

 矢野経済研究所の調べでは、2021年の代替タンパク質の世界市場規模(植物由来肉、植物由来シーフード、培養肉、培養シーフード、昆虫タンパク計)は、メーカー出荷金額ベースで4861300万円となった。2030年には331138900万円に拡大すると予測する。今後は、植物由来と培養のハイブリッド製品などの研究開発が進む可能性があり、代替タンパク質市場の動向が引き続き注目される。

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