日本食店数3%増で過去最大 タイ 成長は鈍化、総合和食が1位に NNA
2025.01.17
日本貿易振興機構(ジェトロ)バンコク事務所は1月8日、タイで営業する日本食レストランについての調査結果を公表した。2024年は5916店舗で、前年の5751店舗から165店舗、2.9%増となった。07年に調査を開始して以来、店舗数は右肩上がりに増え続けているが、外食産業の競争激化で成長速度は鈍化している。業種別では23年までトップだった「すし」を上回り、「総合和食」が1位となった。(写真はイメージ)
調査は日本食メニューが半数以上を占め、客席を備える店を対象に、24年8月15日~10月31日に実施された。
24年の業種別店舗数のトップ5は、「総合和食」が6.3%増の1439店、「すし」が6.8%減の1279店、「ラーメン」が8.2%増の802店、「居酒屋」が9.8%増の480店、「すき焼き・しゃぶしゃぶ」が1.1%減の448店だった。増加率が高かった業種では、「そば・うどん」が16.1%増の36店、「喫茶」が13.1%増の329店だった。
ジェトロバンコク事務所の黒田淳一郎所長は、すし店が減少した理由について、消費者が求める品質レベルが上がり、競争が激化した▽19~22年に低価格のすし店がフランチャイズで増加傾向にあり、供給過多になっていた▽食材鮮度が重要で食材ロスが発生しやすく、集客が難しくなれば閉店せざるを得ないケースが多い――との3点を挙げた。一方で総合和食については、特に地方では専門和食のマーケットが小さいため総合和食の形態が選ばれやすいこと、専門店ははやり廃りが大きいため、総合和食に転換していくサイクルがあることが増加の原因だという。
客単価別では、高価格帯と低価格帯の二極化が進んでいる。1人当たりが「1000バーツ(約4560円)超」の店が13.9%増の270店と伸び率が最大。次いで「100バーツ以下」が8.4%増の749店、「251~500バーツ」が5.1%増の1401店、「101~250バーツ」が0.8%増の2057店、「501~1000バーツ」が1.3%減の681店だった。黒田氏は「お金がある人・ない人の二極化もあれば、外食費を安く抑えるとき・お金をかけていいものを食べるときという消費行動の緩急の二極化もある」と説明した。
日本食は長年タイで定着している上、近年訪日タイ人が増え、日本食に対する経験や知識が向上し、これまで以上に本物の日本食やトレンドを求める消費者が増える傾向にあるという。日本政府観光局(JNTO)の統計では24年1~11月に日本を訪れたタイ人の数は前年同期比15.2%となる100万2000人で、年間過去最高を記録した19年以来の100万人突破となった。
■地方で日本風カフェ人気
地域別の店舗数をみると、「バンコク」と、「バンコク近郊5県(ナコンパトム、ノンタブリ、パトゥムタニ、サムットプラカン、サムットサコン)」ではそれぞれ2.7%増、「その他の地方」は3.1%増といずれの地域でも増加した。
特にバンコク近郊とその他の地方では「喫茶」の伸びがそれぞれ23.3%増、29.8%増と目立つ。ジェトロの黒田氏によると、近年、抹茶ラテをはじめとする日本風のドリンクや、菓子やパンがタイ人の間で受け入れられているため、日本風のカフェが増えていると考えられている。
訪タイ観光客の増加もレストラン増の要因となる。黒田氏は、特に北部チェンマイや南部プーケットなどの観光地では、休憩場所としてカフェへのニーズが高まっているのではと推測した。
■目新しさが好まれる文化
タイの日本食レストランの数は世界的にも多く、各国・地域と比較すると、23年時点では中国、米国、韓国、台湾、メキシコに次ぐ6番手。ジェトロの黒田氏は、タイでは人口規模に比べて外食の機会が多いため、外食産業のポテンシャルは高い一方、目新しいものが好まれる文化で新メニューや新企画を常に打ち出していかなければならない面でチャレンジングでもあるという。足元では外食産業の競争激化や景気低迷により消費者の購買力が低下しているため、プロモーションや価格面での集客努力も求められる。さらに原材料価格が全体的に上昇しているほか、人件費、店舗賃貸料の値上がりもレストラン各社にとって大きな課題となっている。
黒田氏は日本食レストランの増加の意義について「日本の食文化の広がりや、日本産食材の使用が増えることで輸出増につながる」と説明した。
ジェトロはタイ各地で商談会を開催し、日本産食品の消費増を促進している。24年9月にはプーケット、11月にはチェンマイで食品輸入業者とバイヤーの商談会を開催。今年2月にはバンコクで対面とオンラインの商談会をそれぞれ実施する予定だ。(NNA)
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