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崖っぷち農業をめぐる与野党協議に注目  小視曽四郎 農政ジャーナリスト  連載「グリーン&ブルー」

2025.01.20

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 政府の2024年度補正予算案は、28年ぶりに衆院で野党の修正要求をのんで成立する様変わり。少数与党、石破政権の悲哀だが、年明け以降はいよいよ来年度予算案を巡り、一層ハードルが上がったテーマでの政策協議を迫られる。注目は年度末に向け食料・農業・農村基本計画の策定や農作物の適正な価格転嫁を内容にした法案提出が待つ農業分野だ。

 改正基本法は食料安全保障の確保が大命題。そのための具体策を決める基本計画には食料自給率やその他新たな達成目標が設定される運び。急減する耕作農家、農地の確保、数年内にも自給崩壊が危ぶまれる米政策の見直し、ついに1万戸を切った酪農や畜産農家経営、作付けが激減の野菜や果樹など縮小一途、崖っぷち農業の起死回生が急務だ。

 さすがに危機感を高める自民党は、総裁直轄の特別機関「食料安全保障強化本部」(本部長=森山裕幹事長)を設置。顧問に鈴木俊一総務会長、小野寺五典政調会長、本部長代理に宮下一郎総合農林政策調査会長を充て、食料安保確立に向けて十分な「財源」確保に「オール自民党」布陣というかつてない態勢で臨む。「とにかく農家の急減が最大の課題」(党内)の認識だが、急減を止める策は生み出せるのか。

 この自民党の動きに野党も黙ってはいない。衆院農林水産委員会は与党が自公の19人。これに対し野党は立憲民主党13、日本維新の会、国民民主党各3、れいわ新選組と無所属各1の21人で、野党優位に逆転。採決に加わらない委員長ポストは与党が確保。しかし、法案を通すには野党から最低2人を切り崩す必要がある。

 すでに自民は少数与党転落後、国民民主と政策協議を開始。補正予算対応に向け、年収103万円の壁問題などで与党との度重なる調整劇は周知の通りだ。国民民主の玉木雄一郎代表は、生家が兼業農家で祖父はJA組合長という環境で育ち、農業への思い入れは人一倍強い。先の総選挙での農業公約は①食料自給率50%の実現②食料安全保障基礎支払の創設③農業予算の1兆円増額ーなど現場目線の細かな公約を提示。特に食料安保基礎支払は米、麦、大豆なら作付面積、家畜なら頭数に応じ「基礎所得」として農家に交付金を支払う。農家の営農継続が最大の狙い。注目する農家も少なくない。玉木代表は自民党との協議分野に米など農家への直接支払いや財源作りを近く求める方向だ。これには立民の野田佳彦代表も着目。11月中旬には党内農水部門会議に出席し、「農政でも野党の結集を主導したい」と表明。早くも国民民主とは農林幹部議員が接触し、野党連携を探り始めている。

 ただし、石破氏と玉木氏ら野党とは同じ農家への直接支払いのあり方でも「生産性向上」へのこだわりなど手法をめぐり「同床異夢」の様相も。政権維持もこだわりも結構だが、何が主眼かを忘れず調整してほしいものだ。

(Kyodo Weekly・政経週報 2024年12月30・2025年1月6日合併号掲載)

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