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菓子業界「食感」狙い変わらず  需要支える巣ごもり消費  大篭麻奈 矢野経済研究所フードサイエンスユニット主任研究員 

2021.03.15

菓子業界「食感」狙い変わらず  需要支える巣ごもり消費  大篭麻奈 矢野経済研究所フードサイエンスユニット主任研究員  の写真

 菓子市場は「巣ごもり消費」により自宅用商品の売り上げが伸びているものの、ギフト・土産需要は低迷するなど、新型コロナウイルス感染拡大の大きな影響を受けている。2019年ごろからの市場の動きを振り返り、今後の動向を考えてみた。(写真はイメージ)

 和菓子・洋菓子、ケーキやアイスクリームなどデザート類を合わせた菓子市場は、コロナ前はおおむね堅調に推移していた。「食感訴求」「健康機能性」「本格志向」をキーワードとした菓子が好調に推移する傾向がみられ、特に「食感訴求」を狙って"ザクザク"や"とろとろ"といったオノマトペ(擬音語・擬態語)を商品名や宣伝文句に絡めた商品が人気だった。

 カテゴリーとしての新規性が出尽くす中で、食感にフォーカスした訴求や、異なる食感のコントラスト(対比)を楽しむ訴求が、消費者の興味・関心を引いたのだろう。

変わらぬ「食感」「健康」狙い


 こうした嗜好面でのトレンド・価値認識は「ウィズコロナ」「アフターコロナ」でも大きく変わっていない。外出制限が1年以上求められて閉塞感のある生活を強いられ、たまったストレスの発散先として、リモートワークのお供として、スイーツ・甘い物を自宅で食べるという消費行動が続く中、食感や健康機能を訴える商品の売り上げ
堅調に推移している。

 需要別でみると、日本独特の文化である手土産、ギフト向けは、コロナ禍で大幅な縮小を余儀なくされている。例えば旅行・出張土産や、友人宅訪問時・帰省時に持参する手土産、株主総会などの法人会合時の手土産。冠婚葬祭における引き菓子や香典返しといった需要は振るわない

 物事や人間関係を円滑にするために、菓子は私たちの生活のさまざまな場面で、活用されていたということ、そして、"頂いて消費する"という需要が思ったよりも大きいということに、菓子市場関係者は初めて気が付いた。

昨春の需要は消失、自宅用が好調


 業態別や商品別に2020年の動きを振り返ると、菓子の
製造業と小売業には、百貨店をはじめ大規模商業施設の営業の自粛・縮小による販売機会の減少が直撃した。駅・空港などの交通拠点チャネルは、人の移動が制限されたことによって大幅な売り上げダウンとなった。

 毎年3~5月は新年度に係るギフト需要や春の行楽需要、ゴールデンウイークの旅行・帰省に伴う土産需要などが発生する一大商戦期である。20年はこれらの需要が消失してしまった。

 こうした中でもケーキ店など個人経営の洋菓子店には、在宅率の上昇がプラスに働いた。人気店では20年4~5月のケーキの売上高が、前年同月の2~3割増だったという店舗も見られた。

 店舗別ではスーパーとコンビニで、はっきり明暗が分かれた。スーパーは食品購入を目的とした来店客数の増加、それに伴う"ついで買い"需要の増加で、おおむね好調だった。

 メーカーからスーパーに卸される「流通菓子」の売り上げは、20年3~5月に前年比で2割近く増えた。毎日仕入れがある菓子コーナーの売り上げをみると、3~5月はチルドの菓子は20%近く、常温の菓子も10%近く伸びたとみられる。

 コンビニは通勤通学客の減少から、特にオフィス立地の店舗は苦戦を強いられた。弁当・惣菜類の売り場が、「家飲み」を想定した缶ビール・缶チューハイのケースや、おつまみ商品で埋め尽くされた。

 4月の売上高は全店・既存店ベースともに1割減、毎日店舗に配送される食品は13%減、加工食品も8%減となった。コンビニスイーツもこうした動向に左右されたとみられる。

土産・ギフト向けも「届ける」戦略へ


 土産菓子はこれまでインバウンド(訪日外国人客)の恩恵を大きく受けていた分、コロナ禍の影響が重く表れた。中国などの旧正月商戦の減少、インバウンドの消失、東京五輪
の延期による販売機会の逸失、春や秋の行楽シーズンの需要減少、帰省控えなどがあった。

 これまでの日本の観光業界は、シニア層主なターゲットにしてきたが、シニア層は感染症が重症化するリスクが高いことから、回復が鈍くなっている。今後は業界として、戦略の見直しが必要になるかもしれない。

  これまでギフト向けの菓子を製造する企業・販売業者は、ブランド力を維持するため、戦略的に販路を限定してきた。しかし「ウィズコロナ」では消費者の移動距離が短くなるため、"モノがあるところへ人に来てもらう"という考え方から、"人のいるところにモノを届ける"という発想に転換することが求められる

 新型コロナウイルスのワクチン接種が開始されたが、ここにもさまざまな課題や懸念があり、完全な「アフターコロナ」を迎えるまでには、遠い道のりであるとみられる。私たちの生活に笑顔と安らぎを与え、日常生活の潤滑油になってくれていた菓子の業界に、早く笑顔が戻る日が来ることを願ってやまない。

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